Q: 建設資材の卸売業を
営んでいますが、
8年前に採用した社員が
同じエリア内の同業他社に
転職をしました。
その際に当社の顧客情報、
顧客名簿を使って
営業を仕掛けてきて困っています。
既に3社の契約を持っていかれました。
既存客には手を出さないように
してもらいたいのですが、
どのように対処したらよろしいでしょうか?
また他の社員が
同じことをやらないよう、
防止策を講じたいと思います。
良い知恵があったら教えてください。
百戦錬磨の専門家が回答をします。
A:このようなケースは最近全国で見られるようになってきました。
しかも業種を問わずの状態です。
今回のケースでは、まず無防備な状態で社員の転職を認めてしまっていることが原因の一つです。また企業側にも労基法違反をはじめとするコンプライアンス違反などの負い目があり、強く出ることが出来ないことも問題です。
社員の退職に際して、誓約書などを取り付けている場合は、強く抗議し、場合によってはその社員を採用した会社に抗議することも一つの手ですが、裁判となった場合は勝てるかどうかは分かりません。
今後同様のことを社員から起されないための防止法を下記に記します。
1.どのような場合にも必ず出てきますが、就業規則等の規程の強化が必要となる
2.上記1.の中でも特に退職間際のルールの強化が必要
(1)誓約書(情報漏えい防止、競業避止など)を複数枚取付る
(2)退職金制度の見直し,特に減額や不支給の事由を明記し退職後も一定の期間
拘束できるようにする (詳細は別途お問い合わせください。)
(3)不正競争防止法(注1)違反や競業避止義務違反に対する損害賠償条項を設け、不正行為があった場合に備える
3.普段から社風作りに注力し、労使間、社員間のコミュニケーション力の向上を心掛ける
4.社員研修を行いベクトル合わせと価値観合わせを実施。労使間の時間の共有を怠ると価値観統一は困難です。
(注1)
営業秘密とは?
1秘密管理されており(秘密管理性)
2有用であり(有用性)
3非公知である(非公知性)情報 をいう
例えば、製造技術の各種技術、ノウハウ、販売マニュアルなど。
*秘密管理性:従業員、外部者から、認識可能な程度に客観的に秘密「部外秘」と分かるようになっている。
⇒アクセス制限がある、普段から漏洩防止策を講じている。キャビネットに入れている場合も鍵の管理がなされている。
⇒管理ルールが周知されている。
<営業秘密と認められた顧客情報>
1.電話占いの顧客情報
2.ダイレクトメールの顧客名簿
3.取引先住所
4.人材サービス登録派遣のスタッフ名簿
5.墓石販売者の顧客名簿
6.美術工芸品販売業者の顧客名簿
7.男性用かつら販売業者の顧客名簿、顧客情報 など
<顧客情報のほかで「営業秘密」と認められたもの>
1.製造プラントの図面
2.パチンコ店の還元率、売上金額
3.ゴマ豆腐のレシピ
4.取引商品の在庫一覧表、原価表
5.フランチャイザーのマニュアル
6.眉のトリートメント技術
7.バックの販売先業者名、販売数量、販売価格、仕入れ価格、利益額など
<裁判例における不正取得>
1.窃盗による取得
2.業務上横領による取得
3.詐欺による取得
4.その他の不正の手段による取得
例)
1.企業の研究開発に従事していた者が独立しようとして自ら作成にあたったプログラムをコピーした事件で業務上横領罪が適用された。
2.会社の経営者と対立して退職し、競争会社に就職しようとした者が、退職した会社の秘密資料である購買会員名簿4冊を窃取しコピーした。
企業において営業秘密を管理するために、従業員との間で、営業秘密の使用、開示制限契約を結び、また退職後について一定の競業制限契約を課すことが多いようです。退職後の競業の制限を定めた規則がなくても、信義則上一定の範囲でその在職中に知り得た営業秘密を漏洩しない義務を負う判決もあります。
また、会社の技術秘密を知る被用者の退職後における競業行為を禁止する旨の特約を有効なものと認めた判決もあります。
※この記事は過去にメルマガで配信した内容です。
法改正等により、現状とは異なっている部分がある可能性がありますことをご了承ください。
2015年2月12日(Vol.75)
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