手付金ってなに?
Q: 先日マイホームを購入し、契約時に手付金を支払いました。
手付金とは何ですか?申込証拠金のことですか?
購入をキャンセルした場合は、支払った手付金はどのようになるのでしょうか?
A.申し込み証拠金は、申し込みをキャンセルした場合でも、戻ります。手付金の場合は、原則戻りません。場合によれば、違約金の支払いが生じます。
■申込証拠金
申込証拠金とは、契約前に購入意思の証として不動産会社などに支払う金銭のことです。
明確な法的位置づけはなく、本気で購入意思があることを示して、他の希望者に対して売買交渉を優先してもらうといったものです。申込証拠金は通常数万円から10万円程度で、契約が成立しなかった場合には原則返還されます。
ただし、買主から撤回を希望した場合に、不動産業者が返還を拒んでトラブルとなるケースもあるので、領収書の但し書きに「契約が成立しない場合には返還する」旨を明記してもらうのが賢明です。
宅地建物取引業法では、申込証拠金や預かり金について、契約不成立の場合に返還を拒むことは禁止されています。
■手付金
手付金とは、売買契約の締結から不動産の引渡し前の間に支払われる金銭で、最終的に売買代金の一部になる金銭のことです。
■手付金の種類
手付金には、「証約手付」、「解約手付」、「違約手付」という3つの種類があります。
・ 証約手付…契約が成立したことを示す効力をもつもの。
・ 解約手付…買主は、売主が履行に着手するまでは、売主に対し、支払い済みの手付金を放棄して売買契約を解除でき(手付流し)、売主は、買主が履行に着手するまでは、買主に対し手付金を買主に返還するとともに、手付金相当額の金銭を買主に支払うことで売買契約を解除できるというもの(手付倍返し)。
通常の不動産売買契約においては、この「解約手付」を「手付金」として授受されます。なお、民法でも手付金の性質について特段の定めがない場合には「解約手付」と推定するとされています。
・ 違約手付…契約上の債務を履行しないときに「違約罰」として没収されるもの。
■手付解除
解約手付による契約の解除を一般的に「手付解除」といい、手付けを倍返しする、または放棄することにより契約を解除することが可能です。
ただし、手付解除ができるのは、「相手方が履行に着手するまで」とされています。つまり、既に相手方が契約に定められた約束事を実行している場合には、手付解除はできません。
なお手付解除に当たっては、「相手方が履行に着手しているかどうか」をめぐってトラブルになることも多いようです。また、手付解除が可能な期間は、売り主と買い主双方が解除権をもっているので、契約が実行されるかどうかが不安定な状態となります。
したがって、手付解除ができる期間を「契約日から〇日以内」と限定することが多いです。
マイホームの購入は、一生に一度あるかどうかのことです。よく考え、また分からないこと、疑問に思うことはしっかり説明を受け、納得してから契約して手付金を支払いましょう。
手付金は戻ってくる?
Q: マイホームの購入契約し、手付金を支払いました。
同時に住宅ローンを申し込んでおり、住宅ローンの審査が通らなかった場合は契約違反となり、
すでに支払った手付金は没収されるのでしょうか?
A.「融資特約条件付契約」にしておけば、もし、住宅ローンの審査が通らなかった場合は、無条件で売買契約は解除され、ペナルティなしで手付金は戻ってきます。
不動産売買契約の条件付契約には「停止条件付契約」と「解除条件付契約」があります。それぞれ条件が成立しなかった場合には、契約がもともと無かったことになるものや、契約を解除することができたりするものがあります。
■「停止条件付契約」
一定の事実(条件)の発生(成就)によって効力が生じる契約のことを「停止条件付契約」といいます。「建築条件付土地売買」などがそれに相当します。
これは、建築条件付の土地の売買契約を結んでから3カ月以内に、建物の建築に関する請負契約がなさなければならない契約です。その請負契約がなされないと、支払い済みの金銭(手付金)はすべて無条件に買主に返還されます。
「地主承諾条件付契約」の場合は、借地権の土地売買契約で、売買にあたり地主の承諾を要する場合などもこれに該当します。この場合も、地主の承諾が得られなければ、支払い済みの手付金は無条件で買主に返還されます。
■「解除条件付契約」
一定の事実発生によって効力を消滅させる契約のことを「解除条件付契約」といいます。「融資条件付契約」がその代表例です。家を購入するときには、住宅ローンを申し込む人が多いです。しかし、住宅ローンはすべて申請した人が認められるとは限りません。申請しても審査に通らない場合もあります。
この場合において、住宅ローンの審査に通らなかったと分かった時点で、契約の効力はなくなります。ただし、これに関しては買主にいくつかの選択肢が設けられています。無条件で自動的に契約が解除されるという場合と、買主が契約を解除することが出来るという選択肢です。
住宅ローンの審査が通らなかった場合に、金融機関からの融資はあきらめて、親や親戚からお金を借りる等して工面し、契約を解除せずに続行する場合などです。
■売買契約を締結する場合の注意点
「停止条件付契約」や「解除条件付契約」は、上記の例に限らず原則として当事者間で自由に取り決めることができます。条件内容によっては、停止条件に該当するのか解除条件に該当するのかが判断できない場合もあり得ます。契約書の条項がどちらに該当するのかを明確にすることが求められます。
一般消費者の立場でこのような契約に臨むときは、それが停止条件なのか、解除条件なのか、解除条件ならば、解除の際に意思表示(口頭、文書)が必要なのかどうか、あらかじめ、しっかり説明を受けることが必要です。
※この記事は過去にメルマガで配信した内容です。
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2017年2月6日(Vol.219)、 2017年3月6日(Vol.223)
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