法人と経営者が明確に分離されている?
Q: 経営者保証に関するガイドラインについて詳しく教えて貰えませんか?
メルマガ読者様から下記のお問い合わせを頂きました。
先日のメルマガで、今年2月に出された「経営者保証に関するガイドライン」によって経営者が連帯保証にならなくても良い可能性があると解説をして頂きました。
その要件として書かれていた「法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている事」について詳しく教えて頂けませんか?というご質問を頂きました。
A: 以下の様な対応が必要になります。
ガイドラインでは、法人の事業用資産を経営者個人が所有しているケースにおいて、その解消や法人から経営者への資金流出(貸付金等)の防止、法人の資産・経理と経営者の資産・家計を適切に分離することを求めています。
例えば次の様な対応が必要になるとされています。
1)「資産の分離」については、経営者が法人の事業活動に必要な本社・工場・営業車等の資産を保有している場合、経営者の都合によるこれらの資産の第三者への売却や担保提供などにより事業継続に支障をきたすおそれがあるため、そのような資産については法人所有とすることが望ましいと考えられています。
なお、経営者が所有する法人の事業活動に必要な資産が法人の資金調達のために担保提供されていたり、契約において資産処分が制限されていたりするなど、経営者の都合による売却等が制限されている場合や、自宅兼店舗や自家用車兼営業者等、明確な分離が困難な場合においては、法人が経営者に適切な賃料を支払うことで、実質的に法人と個人が分離しているものと考えられます。
2)「経理・家計の分離」については、事業上の必要が認められない法人からの経営者への貸付は行わない、個人として消費した費用(飲食代等)について法人の経理処理としないなどの対応が考えられます。
経営者保証を外すためには、適切な企業運営が必要になります。特に法人から経営者への貸付金については、法人と個人の一体性解消には必ず必要なテーマになります。
法人からの貸付金(実質的な貸付金勘定も含む)を解消するのに活用出来る金融商品もありますので、経営者保証に関するご相談はお気軽にお問い合わせを下さい。
やっかいな経営者保証ガイドライン
Q:経営者保証に関するガイドラインのポイントを教えて下さい。
今年2月に発表をされた経営者保証に関するガイドラインについてセミナーや業界紙などで多く取り上げられています。
ちょっと分かり難い内容なので簡単にポイントを教えて貰えませんか?
もう経営者が法人に対して連帯保証をしなくて良いのでしょうか?
A: ポイントは3つです。
本メルマガで何度か取り上げております「経営者保証に関するガイドライン」についてですが、簡単に解説をしますとポイントは以下の3点です。経営者が連帯保証をしなくてよくなるにはハードルが高いと言わざるを得ません。
●良い会社は新規借入時には個人保証はいらない
ガイドラインが定めている「良い会社」の定義とは、
法人と経営者との関係が明確に区分・分離されている
財務基盤の強化
財務状況の適切な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
の3点とされています。
1.につきましては、バックナンバーVol.21をご参照下さい。
2.につきましては、経営者個人の資産を債権保全しなくとも、法人のみの資産・収益力で借入返済が可能かどうかを判断します。具体的には、業績が堅調で十分な利益と内部留保があることや、業績や内部留保は多少不安でも、借入返済が十分出来るだけの利益(キャッシュフローが見込める事)などが求められます。
3.については、年に1回の決算報告だけでなく、月次決算書(月次試算表・キャッシュフロー計算書)などの会計帳簿が素早く適切に作成されており、開示出来る状況にあるかがポイントになります。
●破綻時の個人現金は多く持てる様になった
従来は経営破たん時には、経営者個人の自宅等も含めて個人資産すべてが回収対象となりましたが、今回のガイドラインには一定の経済合理性が認められれば下記財産は保証人に残すことを検討する様にと定められています。
一定期間の生活費に相当する現預金
華美でない自宅
主たる債務者の実質的な事業継続に最低限必要な資産
その他資産で必要と認められるもの
●旧代表者は連帯保証を外す。ただし株主で有れば外されない
事業承継により、経営者が後継者に変わった場合の連帯保証については、金融機関は前経営者の連帯保証を外すかどうかは下記の点を考慮して検討する様に定められています。
新経営者は経営者の交代による経営方針や事業計画の変更が発生する場合には、丁寧に債権者へ説明をすること
上記に掲げた「経営の個人・法人の分離」「財務基盤の強化」「適時適切な情報開示等による経営の透明性確保」が図られているかどうか
前経営者は実質的な経営権・支配権を有していないこと。法人の代表から退くのと同時に株主等にとどまる事なく実施的にも経営から退くこと。同時に当該法人から役員報酬を受取らないこと
前経営者が法人から多額の借入金を行っている場合には、これを返済すること
法人の資産や収益力では既存債権の回収に対して懸念が残る場合には、後継者から担保等の提供があること
これについては、非常にハードルが高いと言わざるを得ないのが現状です。
経営者保証に関するガイドラインのポイントを3点に絞って解説しました。特に事業承継においては、経営者保証は非常に重要なテーマになります。
経営者保証に関するガイドラインの内容や事業承継における借入金対策など、各種ご相談は無料で承ります。弊社スタッフならびに弊社提携の各種専門家が対応をいたしますので、御気軽にご相談下さいませ。
経営者保証に関するガイドラインのその後
Q:昨年の2月より始まった経営者保証に関するガイドラインによって法人の借金に対して経営者が連帯保証をしないケースは増えているのでしょうか?
実態を教えてください。
A:経営者の連帯保証を取らないケースも出て来始めています。
平成26年2月より始まりました、金融機関に対する「経営者保証に関するガイドライン」について、実施後約1年半が経過しました。この「経営者保証に関するガイドライン」についてのポイントは以下の3点です。
(1) 法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと
(2) 多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること
(3) 保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること
このうち(1)については、最近になって融資を実行する際に、経営者個人の保証を求めない事例が報告されてくるようになりました。
財務内容が良い法人は当然の事ながら、経営者保証を外す事も金融機関との交渉によっては可能ですし、財務内容がよくない企業や担保が不足している企業であったとしても、経営者個人が連帯保証を行わずに融資が実行された事例が増えてきました。
ただ財務内容がよくない企業等の融資について、経営者保証を付けずに融資が実行されるケースについては以下の共通点があります。
・ 法人と個人が明確に分離されている事
・ 財務基盤は多少不安定でも、返済が見込めるだけの収益力があること
・ 財務状況の適切な把握と開示が行われており、経営の透明性が高いこと
この3点をクリアーしておく必要があります。逆の表現では、この3点を兼ね備えた法人であれば、既存融資分であったとしても、経営者個人の連帯保証は外せるケースもあります。
金融機関からの融資について、経営者個人の連帯保証が外せるのかどうか?一度、取引先金融機関に確認をされてみてはどうでしょうか?なお、金融庁ホームページ等に経営者保証に関するガイドライン実施後に、個人保証を求めなかった事例なども紹介されていますので、参照されてみてはどうでしょうか?
※この記事は過去にメルマガで配信した内容です。
法改正等により、現状とは異なっている部分がある可能性がありますことをご了承ください。
2014年6月30日(Vol.21)、2014年8月18日( Vol.32)、2015年9月10日(Vol.132)
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