社員の労務トラブルの画像

社員の不正にどう対処すれば良い?

Q:社員が通勤手当を水増しして
不正に受給している事が発覚しました。

他の社員への示しがつかないので
本人に懲戒解雇を通告しようと思います。
何か注意すべき点などがあれば教えてください。

 

A:通勤手当の不正受給について、解雇が認められるポイントはいくつかありますので、くれぐれもご注意下さい。

社員の不正受給で一番多いのは、通勤手当に関するものです。通勤経路をごまかしたり、住所を変えるなどして不正受給を行っている事例は、企業規模を問わずに多く発生しています。通勤手当の不正受給については、懲戒処分の対象にする事は出来ますが、注意すべきポイントがいくつかあります。

まず最初のポイントは就業規則に社員の不正について懲戒解雇が出来る旨の記載があるかどうかによります。

次に注意すべきポイントとしては、社員が不正受給した総額が幾らなのか?という点にあります。過去の裁判例で、通勤手当を不正受給した社員が懲戒解雇され、その解雇が無効であると従業員が会社を訴えたケースにおいて、会社側の解雇が「妥当」と判断されたケースと「無効」と判断されたケースが存在してます。

過去の判例においては、4年間で200万円超の不正受給をした社員の解雇は「妥当」と判断された判例もあれば、4年半で約30万円の不正受給をした社員の解雇は「無効」と判断された判例もあります。

過去の裁判例において懲戒解雇が妥当かどうかは、「不正受給の総額」と合わせて「悪質性の有無」も問われています。前述の200万円超の不正受給をした事例では不正受給の内容も悪質でしたが、普段からの勤務態度にも問題があり、両方を総合的に判断して懲戒解雇が「妥当」と判断されています。

後の懲戒解雇が「無効」と判断された事例では、賃金カットされた穴埋めを目的として、通勤時間が長くなっても交通費が安くすむ経路を使うなど詐欺的な要素がなく、情状酌量の余地があるとして懲戒解雇が「無効」と判断されています。

ですので、社員の不正受給が即「解雇」につなげられるかどうかは、実際の状況によりことなりますので、くれぐれも慎重に対応をしてください。なお、社員による交通費の不正受給を見つけた場合には、次の様な手順で対応をして頂くのが理想的だと思われます。

・ 事実の確認

・ 実際の通勤経路を再確認し、不正受給していた分との差額を返還させる

・ 始末書の提出

この通勤手当の不正受給は、社員の不正に対する認識が低くかなりの企業において発生している事案ですので、まずは就業規則の罰則規定を整備した上で、社員に対して「通勤手当の不正受給は懲戒処分の対象である」と周知徹底させる必要があります。

「金額が小さいから」と言って社員の不正を見過ごしていると、のちに大きな不正に繋がる可能性もありますので、小さい問題のうちに不正の芽を摘んでおくことが重要です。

 

社員が配置転換を拒否したら・・・

新事業所開設にともない、
社員に転勤を命じたところ
転勤を拒否されました。

会社の命令に従わない社員は
解雇したいと考えていますが
解雇時に気をつけるべきことがあれば教えてください。

 

A:配置転換を拒む社員を解雇することは出来ますが、一定のルールに従って解雇しなければトラブルになる危険性があります。

社員に配置転換命令を出したら、これを嫌がってトラブルに発展するケースがあると聞きます。本来、配置転換は雇用契約に基づいて行われるために、これを拒否するということは契約上の義務違反に該当し、就業規則違反により処分の対象となります。

社員に命じた配置転換命令を社員が拒否した為に、会社側が社員を解雇し、この解雇が無効だとして裁判で争われた事例が幾つかあります。これらの裁判事例を見ますと解雇が有効だと認められるポイントは以下の通りです。

・ 転勤等の配置転換命令は業務上必要であることと日常的に行われていること

・ 社員が受ける生活環境の変化が受け入れられる程度のものであること

・ 会社の就業規則上で転勤等の配置転換を命令することが記載されており、実態としても転勤等の配置転換が行われていること

・ 入社時の雇用契約が「勤務地(勤務内容)の限定」していないこと

・ 転勤等の配置転換が必要である理由を社員に説明をしていること

ただし育児や介護などの事情がある場合には、会社側は考慮する必要があると言えるでしょう。特に重要なのは「就業規則に明記する」ことと「配置転換の内示時に説明をしっかりと行う」の2点です。この2点が争点になり、会社側が負けた裁判例も実際にはあります。

実際に配置転換を拒否する社員が出て来ればどうすれば良いでしょうか?

まずは、社員には配意転換に応じる義務があることと、配置転換を拒否することは労働提供義務を果たさないので懲戒処分の対象になることを伝える必要があります。社員の配置転換拒否を安易に受け入れてしまうと、他の社員と不公平になり社内の秩序が保たれなくなります。そのためには配置転換に応じない社員には毅然とした態度で対応する必要があります。

そして配置転換の必要性と、配置転換後の会社として生活のサポートするむねを伝えた上で、さらに拒否をする場合には解雇を視野に入れて対応することになります。

社員との労務トラブルにお困りの方は、専門の社労士をご紹介いたしますので、お気軽にご相談下さい。

 

ミスを社員に損害賠償請求出来るか?

当社社員がミスをして、
取引先に損害を被らせました。

当社は管理責任があるとして
取引先より損害賠償請求を受けたので、
やむをえず取引先からの請求額を
支払いました。

この当社が負担した損害賠償額を
ミスを起こした社員に請求しても
良いのでしょうか?教えてください。

 

A:社員のミスに対して損害賠償出来るかどうかのポイントは2点です。

社員のミスにより会社が損害を被った場合、会社が社員に賠償を請求することがあります。社員に対して損害賠償請求を行う事自体は認められていますが、社員は会社の仕事として行った結果のミスなので、会社がリスクを背負うべきという考え方もあります。

会社が社員に対して損害賠償を行う場合、どのような基準で判断すべきなのでしょうか?社員のミスに対して会社が損害賠償訴訟を行った過去の事例を見ていると、ポイントは大きく2つになります。

◯社員の故意または重過失があったかどうか?

→会社が通常背負うべきリスクについては、会社が背負うべきとされていますが、社員に故意や重過失があった場合については、社員に請求が出来るとされています。

◯労働環境は適切であったかどうか?

→従業員に故意や重過失がなかったとしても、労働環境が整備されておらず損害の発生原因が過重な労働環境にあれば、社員への損害賠償請求は認められないとされています。

これらの事を踏まえますと、そもそもミスを発生させない仕組み作りをしっかり構築しておく事が重要なポイントであると言えます。さらに言えば、社員が故意や重過失によって損害を起こさないようにするための仕組み作りをしっかりと構築しなければなりません。

この仕組み作りを行っている会社は多くありますが、その多くでは仕組み通りに運用されていないのではないでしょうか?仕組み通りに運用がされない理由は、現場に即していない事と仕組みを運用しても適切に評価がされないという事が考えられます。会社と社員・そしてその家族を守るためにも運用出来る適切な仕組み作りをぜひ検討してみてください。

 

※この記事は過去にメルマガで配信した内容です。
法改正等により、現状とは異なっている部分がある可能性がありますことをご了承ください。
2015年7月23日(Vol.119)、2015年10月26日(Vol.143)、2016年2月15日(Vol.169)