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会社への貸付金を放棄出来るか?

Q:長年、経営をしてきた結果、
会社への貸付金がかなり大きな金額に
なってしまいました。

自分が死ぬと会社の貸付金は
相続財産とみなされて
相続税の課税対象になると聞きました。

私が生きている間は少しずつ返済を
受ける予定にしていますが、
死亡した際には相続税が
掛からない様にするために
債権放棄をしようと思いますが
可能でしょうか?

 

A:会社への債権を放棄する事は可能です。

多くの企業様からご相談をいただく内容の一つに「会社に対する貸付金の処理」があります。以前のメールマガジンでもご紹介しました様に、会社への貸付金の返済については生命保険を上手く活用すれば計画的に行う事が出来ます。

ですが、それでも返済しきれない貸付金が残っている時点で、貸付をした経営者が死亡すると「相続財産」に加算されて相続税の対象となります。貸付金残高が高額になっている場合には、高額な相続税負担が発生する可能性もありますので、なんらかの対策が必要となります。この場合、ご質問の通りに「貸付金の債権放棄」という手法も一つの方法として考えられます。

具体的な手法としては、遺言書に債権放棄する旨を記載して頂ければ法人に対する債権を放棄し、相続税の対象財産にする事を免れます。ただしこの場合に注意すべき点は、同族会社の場合には返済義務がなくなった金額を「債務免除に伴う利益」として相続が発生した日に益金として計上する必要があります。

そのために法人では、経営者からの借入金残高相当額が特別利益として計上されるために法人税の課税対象となります。もし繰越欠損金や同決算期に損金として計上出来るものがあれば、債務免除益に対する課税は免れます。

次に債務免除益を計上するという事は、自社株の評価が上昇する可能性があります。繰越欠損金や債務超過になっていて利益を計上しても問題なければ良いですが、債務免除益分の利益が株価を押し上げる事になりますのでこの点は注意が必要です。

そのために法人への貸付金については、

・ 計画的な返済が可能かどうか?

・ 返済が不可能であれば債権放棄をどのタイミングでするのか?

・ 債権放棄をした場合としない場合の法人税・相続税はどうなるのか?

の3点について複合的に検討する必要があります。

法人への貸付金は、「いつでも返せる借金」「返済しなくても良い借金」として放置されているケースが多くあります。さらに銀行融資における査定においても、経営者からの借入金は「自己資本」に組み込まれるなどメリットがあるのも事実です。

ですが、将来の相続・事業承継を見据えて経営者の貸付金については、十分に検討しておく必要がありますのでご注意下さい。なお2015年4月23日配信のメルマガ「Vol.95: 社長からの借入金を返済する方法」にて生命保険を活用した返済方法について解説をしておりますので、合わせてご参照下さいませ。

 

誤った生命保険活用法

相続税対策に生命保険が有効で
500万円×相続人分の保険金は
非課税になると聞きました。

そこで生命保険を掛けようと
思いますが、事業に関係のない
長女と次女を受取人にしようと思います。

長男は事業を引き継ぐ予定で、
自社株や事業用不動産を
相続させる予定ですが、
何か注意すべき点はありますか?

 

A:生命保険金の受取人設定は慎重に検討をしなければ、揉める原因になります。

ご質問の通り、相続税を計算する際には生命保険金の非課税枠が500万円×法定相続人分だけありますので、個人で加入されている生命保険金の合計額がこの額に達していなければ、生命保険を活用したほうが有利になります。

現預金はそのまま課税対象財産となりますので、極端な話ですが3,000万円の預金があればそのまま課税されますが、法定相続人が6名いる場合、3,000万円の保険金に変えておけば相続税の対象外となりますので、この点は活用出来るポイントとなります。

しかしここで注意しなければならないのは、その保険金受取人を誰にするか?という点です。多くのケースにおいて、「子供たち(法定相続人)へ平等に渡したい」という事で保険金受取人を複数に設定したり、同じ保険金額の保険を複数加入し、保険金受取人をそれぞれ子供たちに設定したりするケースがあります。

さらには今回のご質問者のように、事業を引き継ぐ子供には自社株や事業用不動産を相続させるので、不公平にならないように保険金は事業に関係のない子供たちへ渡したいとして設定をされているケースを多く目にします。

この場合、相続が発生した時点で何も揉める事なく相続が終われば良いですが、多くのケースにおいて財産分割時に揉めるケースがあります。

それは、生命保険金を受け取る権利は「受取人固有の財産」であり、相続する財産とは別であると考えるからです。例えば、相続財産が「自社株3,000万円」「事業用不動産2,000万円」あった場合、これら財産は事業を引き継ぐ長男が相続し、事業に関係ない長女と次女がそれぞれ5,000万円の生命保険金を受け取れる様に設定して「公平にした」と思っていたとしても、長女と次女は受け取る生命保険金とは別に、長男が引き継ぐ合計5,000万円分については、相続出来る権利があるために、この権利に基づいて長男へ請求する事が可能です。

このために、もし財産分割が円満に終了しなければ、長女と次女が長男に請求をした場合、自社株や事業用不動産の一部を長女と次女に相続させる必要が出てきますので、その後の事業継続の多大な営業を及ぼす可能性があります。

そのために生命保険金の受取人については、基本的には事業を引き継ぐ予定の法定相続人に集中させておき、一旦は後継者が全額を受け取った後に他の法定相続人に渡す様な流れにしておくべきです。

このポイントは、「生命保険金は遺産に含まれない」「遺産でないので遺産分割の対象ではない」「生命保険金は受取人固有の財産である」「保険金以外の遺産が相続対象となる」という点です。生命保険を活用する場合にはこの点は十分に注意をしておいてください。

なお、生命保険は遺産に含まれませんので、仮に相続放棄をしたとしても保険金受取人が生命保険金を受け取る事が出来ますので、この点からも生命保険の活用は必要であると言えるでしょう。

 

隠した現金が見つからなければセーフか?

数年前より体調を崩していた
実父の容体が悪化し、
予断を許さない状況になってきました。

実父は相当の預金を持っており、
何の相続対策もしておらず、
このままではかなりの相続税を
支払う事になりそうです。

知り合いの社長に相談すると、
「現金を引き出して隠しておいて
見つからなければセーフだ」と言われました。

さすがにこれは極端な方法ですが、
実際に隠した現金が見つからなければ
大丈夫なのでしょうか??

 

A:過去に隠した現金が見つからなくても課税された事例があります。

相談者が聞かれた手法を実際に行った事例が数件、報告されています。
まずはその事例をご確認頂きましょう。

〇 国税不服審判所の裁決(平成23年6月21日)

<事実関係>

・ 被相続人(夫)は平成19年4月11日に入院をした。

・ 相続人(妻と子供たち)は平成19年4月19日に被相続人(夫)名義の定期預金を解約して5,000万円を引き出した。

・ 相続人(妻と子供たち)は、引き出した当日に被相続人に渡したと主張。

・ 被相続人(夫)は平成19年4月20日に一旦退院、翌日の4月21日に別の病院に入院したのち、数日後に死亡した。

・ 相続人(妻と子供たち)は相続開始日までに被相続人が使ってしまい、現金は存在していなかったと主張。

<国税不服審判所の判断>

・ 被相続人(夫)が5,000万円という高額なお金を家族に知られずに 使ってしまうことは通常は考えられない。

・ この現金をギャンブル等の浪費により、全額を使うには 相続開始前の数日間では短すぎる。

・ 被相続人(夫)の普段から考えて、この現金の全額を使ってしまうとは考え難い。

・ 被相続人(夫)自身が数日後に死亡するとは考えておらず、多額の費用が必要な治療費の準備をしていた時に、預貯金残高の8割を超え、総所得金額の2倍以上に相当する5,000万円もの金額を 短期間で使ってしまったとは考え難い。

・ 相続開始日までに、この現金が他の預金等に入金されたり、債務の返済や貸付金に充てられたり、資産の購入の対価などに充てられたりした事実もない。

・ 家族以外の第三者に渡されたような事実もない。

・ 一般的に想定されるお金の使い道について考えてみても、この現金が使われた事実は無かった。

・ この現金は被相続人(夫)が使ってしまったとは言えないから、相続財産となる。

いかがでしょうか?この事例は非常に極端な事例ですが、他の事例においても似た様なケースがいくつかあります。ポイントは、

・ 相続の直前に引き出された

・ 現金として使われた証拠がない

・ 現金が使える状況になかった

として、現金が見つからなかったとしても相続財産に加算された事例があります。
ですから、この様な手法は絶対に取るべきではありません。

この様な事にならない様に、相続対策につきましては早め早めの対策・検討をオススメいたします。

 

※この記事は過去にメルマガで配信した内容です。
法改正等により、現状とは異なっている部分がある可能性がありますことをご了承ください。
2015年8月6日(Vol.123)、2015年10月22日(Vol.142)、 2016年3月31日(Vol.181)