メンタルヘルスの画像

うつ病で休職?

Q:問題社員を厳しく指導したところ、
翌日にうつ病の診断書を持ってきて、
休職を申し入れてきました。

その後一切の連絡が絶たれ、
復帰の目処も立たない状態です。
今後どのように対処したらいいでしょうか。

数千社のコンサルティング実績を持つ
人事労務専門コンサルタントが回答します。

 

A: メンタルヘルス問題は会社の命運を左右する重要事項です。その対策を誤ると、企業の発展が阻害され、衰退を招くことにもなりかねませんので、十分な準備が必要となります。重要ポイントは2点です。

対象者が、①長期間働いている人か、②会社に入って間もない人(1年以内の貢献度の低い人)か、で分類してください。経営は“ボランティア”ではありません。特に最近では不良社員による“偽装うつ”も頻発しておりますので細心の注意が必要です。

対処の前提として、社内における「休職に関わるルール」を明確化します。弊社が規程を作成する場合は「休職規程」を独立規程として作成し、様々なケースに対して備えます。何故なら労働契約は労使間で対等の立場で締結され、会社は労働提供の対価として賃金を支払っているからです。

会社は安全配慮義務を負っていますので、社員の健康管理には最善の注意を払うことは当然です。 一方で労働者の義務は 職場の秩序を保ち、自らの労働力を最大限に引き出す状態を不用意に損なわないことです。

会社側がコンプライアンスを遵守している限り、労働者の健康管理は労働者自身に委ねられるものです。この前提をルール化しておくことで、万一上記のような社員が出てきても、十分な対応が可能です。

<メンタルヘルス対策のチェックポイント>

①自覚症状は3つの「い」

・身体症状 眠れない、食べたくない、だるい・疲れやすい。

・精神症状 仕事に行きたくない、消えてしまいたい、仕事をやめたい。

②堤防の決壊前に対処すると早期治癒につながり、労働力の確保が可能だが、見過ごすと堤防が決壊し、回復までに半年~2年近くの時間を費やすことになります。

③発見のためのサイン(けちな飲み屋の法則)

欠勤、遅刻・早退、泣き言を言う、能率の低下、ミス、やめたいと言い出す。

④受診の勧め 定期健康診断の受診の徹底

⑤就業規則/休職規程

(1) 復職の判断は慎重に

⇒主治医だけでなく、会社指定の医師の診断書を求めることも検討

(2) 休職期間満了のリセット

⇒労務提供が困難な復職は拒絶もありえる

(3) 復職希望者に対する対応

⇒1回目の休職期間満了前に早目に復職希望の対応を

(4) 再就職は期間通算

⇒何度も休職を繰り返す場合は厳格に対応

(5) 治療専念義務のルール化

⇒外泊や遊興には厳格なルールを課し、治療に専念させる

(6) 柔軟な運営を

⇒一定期間の短時間勤務ルールや休職期間の延長ルールを定める

(7) 勤務年数による条件の明確化

⇒前職での健康障害(再発等)をどこまで救済するか

(8) 休職規程の作成・運営

⇒偽装うつ病の蔓延防止策 (健康保険の保険金詐欺の防止)

(9) 健康確保措置(会社)と健康の維持管理義務(社員)の明確化

⇒健康管理は社員の責任

(10)休職中の会社との接点の確保

⇒労働義務を特別に免除して療養していることを明記し、担当者(総務・人事)とは電話・メール・面談を義務付ける 本人負担分の社保等の負担明記

中小企業の場合は簡単に配置転換が出来ません。社員の一生を考慮した場合、社内に無理に留めて、症状を再発させ、慢性うつにさせないためにも、休職期間中に本人あるいは同居の親族と面談できるルールを確立し、困難な場合は職場復帰を拒否することも検討します。

上記のようなルールを確立すると同時に、休職に関する覚書等書面を作成し、違反行為があった場合は休職期間を中断し、ただちに退職してもらうことも想定してください。

 

社員が入院で有給消化はNG?

Q: 社員が病気により入院する事になりました。

その後の療養も考えますと1ヶ月半から

2ヶ月程度休む事になるのですが、

休職ではなく有給休暇を

適用させようと思っています。

この運用で正しいのでしょうか?

 

A:社員の同意なく有給休暇を適用させる事は問題があります。

そもそも有給休暇とは、社員が休みたい日を事前に会社へ申請した上で、承認されてから休暇を取る制度です。ですが、実務的には体調不良等で社員が休む場合に、有給休暇を適用しているケースが多いのではないでしょうか?

実は、体調不良等で社員が休む場合に有給休暇を適用する場合には、就業規則に規定がされていることが条件となることはあまり知られていません。特に問題となることが想定されるケースとしては、病気により長期に渡って働けない際にまずは有給休暇を充てておき、その後に休職扱いにするケースです。

実際に過去の裁判例において、社員が上司から受けたパワハラが原因でうつ病となり、休職をした際に休職制度を適用せずに有給休暇にて対応をさせていましたが、社員が上司のパワハラと休職制度が適用できなかったことに対して会社を訴えた事例があります。

この裁判の判決では、上司のパワハラ行為があった事を認め、社員の休職を適用せずに有給休暇を消化させた事は社員への配慮を欠く行為であるとして、全面的に会社側が敗訴しています。なおこの裁判では、パワハラ行為がメインに取り上げられた内容ではありますが、休職ではなく有給消化をさせた行為を裁判所が「不法行為」であると認定している点は注意が必要です。

実際に、業務が原因で休職をしなければならない「労災事故」の場合には、労災保険から給与額面の80%程度の休業補償給付がありますので、こちらを適用させなければなりません。さらに持病等で休職をする場合には、健康保険から傷病手当金が給与額面の60%程度が支給されますので、社員の休職に対しては社会保険制度の活用をまずは検討する必要があります。

なおそもそも「有給休暇」は、社員のリフレッシュ等を目的にした制度で、働ける状態にあるが休みたい時に社員が申請をして休む制度であり、病気等で働けない場合に休むことは全く別物であると認識しておく必要があります。ですから特に注意しなければならないのは、社員が病気等で長期休職をする場合には、社員が有給休暇の適用を希望しない限りは休職扱いとして社会保険の適用をさせるようにしなければなりません。

社員の有給休暇取得並びに休職に関する規定や運用の相談については、労務問題に詳しい社会保険労務士をご紹介しますので、気になる方は弊社までお気軽にご相談下さい。

 

 

※この記事は過去にメルマガで配信した内容です。 法改正等により、現状とは異なっている部分がある可能性がありますことをご了承ください。

2014年9月25日、2015年8月31日(Vol.129)