社員同士の人間関係トラブル
Q:先日、あるプロジェクトを担当させている
社員同士の関係が上手くいっていないことが
判明しました。
激しく口論をしたりして、
他の社員への悪影響や
業務へ支障が出始めています。
二人とも優秀な社員で
上手くやって欲しいと思っていますが、
社員同士の人間関係トラブルは
どの様に対処すれば良いでしょうか?
A.職場におけるセクハラ・パワハラなどの
「ハラスメント」が問題になっており、
特に近年では多くの企業において発生しています。
以前のパワハラは、上司が部下に対して
「仕事や指導の範囲を超えた嫌がらせがある」
という内容が多かったのに対して、
最近では同僚や部下から嫌がらせを
受けているという事例も発生しています。
ただ非常に判断が難しいのは、
「パワハラ」と「単なるわがまま」
「言葉や関係の行き違い」を見極めることです。
実際に裁判例では、パワハラは上司部下などの
関係について明確な判断基準はありませんが、
パワハラの定義としては、
・ 客観的にみて業務の範囲を超えた行為であること
・ 被害者側が精神的苦痛を感じていること
とされています。
さらに実際の対応において重要なのは、
パワハラの有無ではなく、
社員からパワハラだという申し出があった際の
会社側の対応です。
事実、過去の裁判例ではパワハラと
認定するレベルではないが、
社員からの申し出があったにも関わらず
会社側の対応が不適切であったとして
「安全配慮義務違反」として、
会社側が敗訴したものもあります。
これは上司部下・同僚を問わずに
重要なポイントで、パワハラの有無だけでなく、
その後に配置転換や担当業務を変えることなどの
対策をして、トラブルの原因になった
当事者同士に同じ業務を担当させない様に
「配慮」する必要があります。
社内における人間関係のトラブルは、
「好き嫌い」「わがまま」のレベルなのか、
本当にパワハラなのか?
の判断は本当に難しいです。
ただ業務に支障が出たり、
社員の健康問題に発展するレベルになれば、
その判断は別にして会社として
何らかの対応をする必要があります。
具体的には、
・ 問題点の把握
・ 解決策の検討
・ 異動や配置転換の検討
・ 会社としての介入
などの対策を行う必要があります。
実際に、社員同士のトラブルが発生した場合に、
当事者同士の職場や座席を変えるだけでも
効果があるケースもありますので、
問題点を把握した上で会社として
速やかに対応をする必要があります。
社内で発生する人間関係のトラブルは、
規模の大小や社員の多い少ないは全く関係ありません。
一人でも社員がいれば発生する可能性があります。
人間関係トラブルが発生したら、
まずは業務に支障を来さない様に迅速に対応することが重要です。
もし社員の健康問題にまで発展したら、
会社としての損失は大きくなりますので、
初期対応はとても重要です。
前述の裁判例でもある様に、
社員の健康を害することなく仕事に従事させることが、
会社として求められている
「安全配慮義務」になりますのでご注意下さい。
4月を前に注意しておきたいこと
4月より新入社員を迎えます。
4月1日の夜に新入社員歓迎会という名の
懇親会を開催する予定です。
社内懇親会でセクハラ等の
トラブルになるケースが多いと
聞きましたが、どの様な点に
注意をしておけば良いでしょうか?
教えてください。
A:セクハラとして会社が責任を負うポイントは業務との関連性であり、 2次会以降も要注意です。
まず始めにセクハラに関ついて昨年末に報道された内容が参考になると思いますので、ご紹介いたします。
<抜粋内容>
◯会社と男性社員に計33万円を支払い命令
判決によると、女性は昨年7月から同社の販売店で勤務。翌月、新入社員の歓迎会の2次会が福岡市内のスナックであり、女性がカラオケを歌っている際、男性社員が太ももを抱きかかえて持ち上げ、同僚の前でスカートがずり上がった。山中裁判官は「女性の性的羞恥心を害する行為であったことは明らか」と指摘。2次会も「職務と密接な関連性がある」と判断した。会社側は「被害者の女性に深くおわび申しあげます。今後は社内での再発防止に努めてまいります」とコメントした。
<抜粋終わり>
この事例では2次会での行為においても、「会社の使用者責任を認め、男性社員と連帯して賠償する」判決が出された点が注目されています。1次会だけでなく2次会も「職務」と同様の解釈がなされています。
ちなみに他の判例では、3次会終了後の深夜1時に行われた行為についても「セクハラ」と認定がされたものもあります。1次会だけでなく、2次会や3次会についても1次会の延長として「業務の一環」と認定される可能性がありますので、社内懇親会についても注意が必要です。
この「業務の一環」として認定されるかどうかの基準は上司と部下の関係にあります。上司と部下では、上司の方が立場は上になりますので部下は「ノー」と言えないことも多くなります。そのために、組織の中で地位が高い人ほど業務の一環と認定される可能性が高くなります。
ですから、社内行事として懇親会を開催し、その後に2次会・3次会となった場合でも、高い地位の役職者が同席していると「業務との関係が密接である」と判断される可能性が高くなります。そのために上司の部下に対する言動は、勤務時間や職場内外を問わず注意をする必要があります。この「業務との関係が密接な」状況で起きたことはセクハラとして認定される可能性も高くなります。
会社として対応すべきことは、
・就業規則にセクハラを禁止する規定を盛り込む。
・どのような行為がセクハラに該当するのかを伝え、防止策を講じる。
・セクハラ対応窓口を設置して、担当者を置く。
などの対応が必要なのです。
役員や社員の行動をすべてチェックすることは不可能ですから、どの様な行動がセクハラ行為に該当するのか?は社内に認知させておく必要があります。特に社歴が古い役員や社員・業歴が古い会社では「昔は許された」と認識して対応が甘くなっているケースが多くあります。
セクハラ行為によって会社が被る損失は非常に大きなものになります。最初にご紹介した会社の様に実名で報道されてしまうケースもあり得ます。会社が大きな損失を被らない様に、社内での懇親会が多くなる4月を前にセクハラ防止への取り組みを確認しておいてください。
※この記事は過去にメルマガで配信した内容です。
法改正等により、現状とは異なっている部分がある
可能性がありますことをご了承ください。
2016年10月24日(Vol.206)、 2016年3月28日(Vol.180)
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