贈与なのに税金払わなくていいの?
【質問】相続税が強化されると
テレビや新聞・雑誌などでよく目にします。
巷では、東京など地価の高い地域では
相続税が掛かる人がかなり増えると聞きました。
やはり、早くから対策を立て、
将来に備えることが
賢明なやり方ではないのでしょうか?
対策の1つに「贈与」があるとよく聞きます。
贈与をすると税金が掛からなくなるケースが
あると聞きましたが、
具体的にはどの様な制度でしょうか?
A: 相続時精算課税制度という制度があります
1.適用条件
相続時精算課税制度は、現時点で贈与はするものの、
税金は仮払いしておき、将来、相続が発生したときに、
相続税として精算納税するものです。
「なんだ…結局、税金は払わなくてはならないじゃないか?!」
とは、言わないでください。
そこは条件次第で払わなくていいこともあるのですから。
この制度を適用するには、
1)65歳以上の親から
2)20歳以上の子供に贈与することが条件ですが、
3)贈与時点で2,500万円まではいったん無税となります。
したがって、3,500万円の贈与であれば2,500万円を引いた
残りの1,000万円にだけ20%の税金を仮払いして、
相続税の申告の際に精算します。
(27年以降、適用要件改正あり)
2.結局、税金払うわけ?
一例で考えてみましょう。
親に相続税評価2,000万円の居宅と
2,000万円の預金があるとします。
居宅は地元にいる長男に相続させるとして、
預金は孫の多い長女に相続させたいと考えても、
将来、分割協議で2人がもめない保証はありません。
こんな時、この制度を利用して、
今のうちに親から長女に預金1,000万円程度を
贈与しておけば、遺言よりも強力に
親の意思を反映させることができるわけです。
将来、相続税の申告はしなければなりませんが、
仮に相続財産が4,000万円程度であれば、
今後予想される税制改正があっても、
子供2人なら3,600万円程度は無税でしょうから、
贈与税はゼロ、相続税も少額で済むわけです。
3.相続財産を増加させない?
親が相続税評価4,000万円の
賃貸マンションを持っていたとします。
これを子供に贈与すれば、とりあえず、
(4,000万円-2,500万円)×20%で300万円の
贈与税を払わなければなりません。
「300万円払わされるだけじゃない?」
いえいえ、贈与後に受け取る賃料は
全て子供のものなのです。
このマンションが年間600万円の資金を生む場合、
10年間なら6,000万円の贈与の効果となり、
仮に子供が3人ならこの3倍の効果も…。
子育て世帯なら、所得税控除も大きく、
また、もらった賃料で孫に十分な教育を
受けさせることも可能ですが、
親の2人世帯なら預金(相続財産)が増えるばかりではないでしょうか?
※この制度は有利・不利の判断が必要ですから、
実際の利用には税理士に必ずご相談ください!
贈与契約書不要!「みなし贈与」とは?
税理士からの勧めで相続対策として
生前贈与を毎年行っています。
ただ、毎年贈与契約書を作成したり
公証役場へ行って確定日付を取得したりと
何かと手間が掛かって面倒です。
最近では、贈与契約書の締結をしなくても
贈与と認められる「みなし贈与」があると
聞きましたがどのような手法なのでしょうか?
A:最近、贈与契約書が不要な「みなし贈与」が注目を集めています。
生前贈与は非常にブームで、
多くの方々が実際に贈与をされています。
国税庁の調査では、毎年贈与をされる方の
年間の平均贈与額は348万円と言われています。
ですが、生前贈与についてはご質問者の方の様に、
贈与をする側と贈与をされる側がしっかりと認識をして、
贈与契約を締結し、そして贈与をした事を
証明する書類の整備をしっかり行っていなければ、
贈与を無効として問題になるケースがあります。
ですがこの、毎年契約書を作成したり、
公証役場で確定日付を取る作業は手間ですし、
贈与する側・贈与される側のどちらかが
病気になって契約締結が出来る判断能力を失うと、
そもそも贈与が成立しなくなるという可能性もあり得ます。
そのために最近では贈与契約を締結しなくても、
税務署側が贈与したとみなしてくれる「みなし贈与」
という手法が話題になっています。
この「みなし贈与」には生命保険を活用します。
具体的には
契約者=贈与者(贈与する側)
被保険者=贈与者(贈与する側)
保険金受取人=受贈者(贈与される側)
の契約形態で、一時払終身保険などの保険商品を契約します。
そして契約成立後に、
契約者を受贈者(贈与される側)に変更を行います。
なおこの契約者を変更する時点においては、
課税関係は何も発生しません。
契約者=贈与者(贈与する側)→受贈者(贈与される側)へ変更
被保険者=贈与者(贈与する側)
保険金受取人=受贈者(贈与される側)
そして契約者が贈与される側の受贈者になった時点で、
この契約を減額(解約)して解約金を受け取りますと、
受け取った解約金は「贈与したものとみなして」
贈与税の課税対象となります。
この契約形態を活用すれば、
「贈与したものとみなされる」ので、
贈与当事者のどちらかが痴ほうや病気等により
契約締結能力がなくなっても贈与は無事に成立します。
ただし注意しなければならないのは、
被保険者である贈与者が死亡した場合には、
前3年間に受け取った解約金は相続財産に加算されますし、
保険金受取人が受け取った保険金も相続財産に
加算をして相続税計算が行われます。
この「みなし贈与」を活用した取り組みは、
大手銀行でも取り組みを行っている手法であり、
最近注目されている手法の一つですので、
毎年贈与をされている方は
手間の省略化の一環として検討されてみてはどうでしょうか?
お年玉は贈与税がかかる?
Q: 去年から、4人の孫に対して
110万円の贈与を始めました。
実はこの110万円の贈与とは別に
お正月にはお年玉として、
それぞれに3万円ずつ渡しています。
合計すると113万円となりますので、
110万円を超えた3万円部分は
贈与税がかかるのでしょうか?
ちょうど申告時期を迎えており
税理士に言うべきかどうか
悩んでおりましたので教えて下さい。
A.結論から申し上げますとお年玉は贈与税の対象になりません。
子供や孫に対して渡すお正月のお年玉は、
原則として贈与税の対象にはなりません。
その根拠となるルールが「相続税基本通達21の3-9」に書かれています。
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社交上必要と認められる香典等の非課税の取扱い
個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする。(国税庁HPより)抜粋
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この規定にあります様に、「法律上贈与に該当するもの」でも
「社会通念上相当と認められるものについては、
贈与税を課税しない」とされています。
ですから、今回のご質問の様にお孫さんに対して
3万円のお年玉は「社会通念上相当と認められる」
金額であると言えます。
ただ、このお年玉の金額が100万円くらいに高額になると、
「社会通念上相当とみとめられる」金額ではないと思われますので、
贈与税の対象になります。
ただこの「社会通念上相当と認められる」金額は
明確にはなっていない点は注意が必要です。
ですから、お年玉として渡している数万円程度であれば、
贈与税の対象にはならないと判断出来そうですし、
数十万円をお年玉として渡して贈与税の申告をしないというのは、
無理があると言えるかも知れません。
気になる方は、所轄税務署または顧問税理士にご確認を下さい。
弊社でも、相続や贈与に詳しい税理士をご紹介出来ますので、
気になる方は一度ご連絡をください。
生命保険を使った新型贈与
Q:私は毎年、子供達3名に対して
生前贈与を行なっているのですが、
税理士からの指導もあり、
贈与契約書と公証人役場へ行っての
確定日付取得をその都度行なっており
非常に面倒だと感じていました。
最近、生命保険を使えば
贈与契約書が要らずに贈与ができる
方法があると聞きました。
もし贈与契約書を作成しなくて良い
方法が本当にあるのであれば
是非とも採用したいので、詳しく教えてください。
A.生命保険契約を使えば贈与と「みなして」
くれるので契約書等は不要です。
生命保険契約を活用することで、
贈与とみなされる「みなし贈与プラン」
という手法があります。
具体的には、
契約者=贈与したい人
被保険者=贈与したい人
保険金受取人=受贈者(贈与を受ける人)
という契約形態で生命保険契約を行います。
このスキームに一番合うのは「一時払い終身保険」ですが、
最近では販売をしている保険会社が少ないので、
既に加入している保険商品や法人契約を活用することも可能です。
この保険契約の契約者を「贈与したい人」から
「受贈者(贈与を受ける人)」に変更します。
なお、保険契約者の変更については、
変更時点での課税は発生しないとされています。
そして新契約者である「受贈者(贈与を受ける人)」が
この保険契約の保険金額を減額しますと、
減額する額に応じた返戻金を受け取ることになります。
この際、受け取った返戻金が贈与と「みなされて」、
贈与税の課税を受けることになります。
この手法の優れている点は以下の通りです。
・ 保険契約を減額することで、
贈与と「みなされる」ので、贈与契約書が不要。
・ 通常の贈与であれば、
双方に「贈与をした」「贈与を受けた」
ときちんと認識がされていないと
贈与と認められない可能性があるが、
この仕組みであればその要件は不要。
・ つまり、渡す側が認知症や病気等で、
契約締結能力がなく、「贈与した」と認識が
出来ない状態でも贈与が成立する。
ただし、実際に活用していただく際の注意点もあります。
・ 被保険者である「贈与したい人」が亡くなると、
「受贈者(贈与を受ける人)」が受け取る保険金は、
「みなし相続財産」となり、相続税の課税が発生します。
・ 被保険者が亡くなった時点から、
遡って3年以内に受け取った解約金は、
相続財産の持戻しの対象となります。
・ どんな保険商品でも可能ではありませんので、
活用する保険商品にはくれぐれもご注意ください。
※特に法人保険を活用する場合には要注意です。
贈与の手続きが非常に簡素化出来るだけでなく、
認知症等で贈与が出来ないリスクも回避出来る素晴らしいプランですので、
ご興味のある方はお気軽に弊社までご相談ください。
※この記事は過去にメルマガで配信した内容です。
法改正等により、現状とは異なっている部分がある可能性がありますことをご了承ください。
2014年4月21日(Vol.2)、2016年1月28日(Vol.165)、2017年2月27日(Vol.222)、2017年5月1日(Vol.230)
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