Q:先日、労働基準監督署から
調査の書面がFAXで送られてきました。
今までこのようなことは一度もありませんでした。
思い当たるのは、2カ月前に2年近く雇用していた
社員が突然辞めてしまったことが
あったことぐらいです。
どのように対処すればよろしいでしょうか。
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A:労働基準監督署の調査は
何の前触れもなくいきなりやってくることもあります。
そのようなケースは証拠の隠滅の可能性がある場合です。
今回の場合は未払いの残業代がなかったかご確認ください。
一般的に立入調査(臨検)される会社や事業所の特徴としては、
①未払いの残業手当がある
②労働災害が頻繁に発生している
③36協定書と就業規則の届け出を行っていない
④過去に解雇で社員と揉めたことがあり、労基署への訴えがあった
などが挙げられます。
1.労働基準監督署の調査が来たら・・・
労働基準監督官によっては厳しい調査が行われ、
会社存続の危機を迎えることになりますので、
十分な対応を心掛けてください。
2.労働基準監督署の権限
①強制立入調査(臨検)を行う権限を持っています。
②逮捕・送検する権限(司法警察権)を有しています。
3.定期監督への対応
①定期監督の場合は申告監督と違い、
監督官の裁量の部分が比較的大きくなります。
初期対応を誤らず、真摯な態度で臨むことで
監督の内容が変わってくる可能性が高くなってきます。
従って反抗的な態度はご法度です。
「コンプライアンス:遵法意識の高い会社」
であることを自然にPRすることで
調査の時間を短縮してもらえるようにもっていきましょう。
②監督官は虚偽申告に対しては徹底的に調査しますので、
間違っても調査前に書類を改ざんしたり、
虚偽の申告をしてはいけません。
一方監督官としての職務を逸脱した行為を
行うこともありますので、
その際は正当な抗議をすることは問題ありません。
4.調査の内容例
①労働者の労働時間を正しく把握しているかどうか?
(タイムカードや出勤簿などの勤怠記録のチェック)
②休日・時間外労働協定届(36協定書)を結び、届け出ているか?
③労働契約は締結されているか?(労働契約書の備付チェック)
④労働者の過半数を代表する者の選出は正しい方法(選挙・挙手等)で行われているか?
⑤管理・監督者の範囲は正しいか?(時間管理をされている者は否認の可能性)
⑥時間外手当の計算が正しく行われているか?(賃金台帳等とタイムカードのチェック)
5.申告監督への対応
①監督官は申告を受けた場合、原則として調査にやってきます。
誰が申告したかは聞いても教えてはくれませんが、
その大半は退職した社員のようです。
②申告者の申告に沿って調査されますので、
監督官の裁量は小さく、
またその内容は定期監督と比較しても厳しいものとなります。
③退職者が申告した場合は、
和解の可能性が見えれば、
申告者の氏名を教えてくれる場合があります。
もし「未払の残業」が明白であり、
申告者の目的であれば、問題が拗れて他に波及してしまう前に、
早期に金銭解決することが望ましいでしょう。
④監督官は申告者と面談していることが多いため、
今回の監督の原因を分析した上で、
申告者との和解の協力をお願いすることも、
調査に手心を加えてもらえる可能性もあり一考の余地があります。
⑤申告監督で未払賃金があり、
辞めた申告者は賃金の時効である2年間遡って
請求してくることが一般的ですので早期の合意を行い、
監督官にその内容を報告することが良い対応法です。
6.臨検の結果
問題がある場合は下記の書面が交付されます。
①法律違反が認められる場合・・・・「是正勧告書」
②法律違反は認められないが、改善の必要がある場合・・・「指導票」
③安衛法その他の違反があり危険な場合・・・「施設設備の使用停止命令書」など
7.労基署の監督の目的は健康の確保(健康確保措置)
①長時間労働をさせない。
やむを得ない場合は健康診断回数を法定(年1回)以上に増やし
健康に留意する姿勢を示す。
②36協定の限度時間(特別条項がある場合は750時間)を上限とする。
③有給休暇を定期的に取得させ、健康に配慮している姿勢を示す。
④メンタル面のサポート体制の構築等健康に配慮した制度の導入を行う。
8.労基署の臨検をどう捉えるか
労働基準監督署の臨検をどのように捉えるかで会社の将来が決まってきます。
出来れば臨検によって会社の改革が行われ、
それを機に会社が成長していくことが望ましい方向です。
長時間労働が恒常的な事業所は生産性が低くなります。
臨検を前向きに捉え、
①自社の業務改善に取り組み、
②生産性の向上を図り、
③社員が辞めない職場造りと、
④ES(社員満足)とCS(顧客満足)の双方を
向上させるよう取り組むことが重要です。
何度も申し上げますが、是非臨検をチャンスと捉え、
未来型の人事制度を構築していただき、
100年継続する企業を目指していただきたいと思います。
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2014年10月16日 (Vol.47)
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