負担が重くなる税金
今年度の税制改正において、重加算税の負担が大きくなると聞きました。
キチンと申告をしているので大丈夫だとは思うのですが、過去に税務調査を受けた際、重加算税を適用された事があり、気になっています。
具体的にはどのくらい負担が増えるのでしょうか?
A:平成28年度の税制改正では、法人税率の引下げが注目されていますが、税負担が増える改正の一つに重加算税があります。
具体的には、
・ 期限後申告
・ 税務調査で指摘されて、修正申告をした
・ 税務署側で税額を決める処分を受けた
のいずれかに該当する場合で、
・ 修正申告等があった日の前日から起算して5年前の日までの間に
・ 修正申告等をした税目に関して
・ 無申告加算税、または、重加算税が課された
という場合が今回の改正の対象になります。
これらの条件に該当した場合の無申告加算税、重加算税は以下の通り、高くなります。
・ 無申告加算税(原則):15% → 25%
・ 無申告加算税(5%が併課された場合):20% → 30%
・ 重加算税(期限内申告の場合):35% → 45%
・ 重加算税(期限後申告の場合):40% → 50%
期限内にキチンと申告をすることは当然なので、無申告や期限後申告は論外ですが、今までは無申告等の不正があった場合でも一律の税率であったのが懲罰的な意味を込めて引き上げられました。
今回の改正で押さえておきたいポイントは2点あります。
◯重加算税を安易に受け入れないこと
重加算税とは、仮装や隠蔽行為があった際に適用される「懲罰的課税」というのが本来の主旨ですが、仮装や隠蔽行為がなかった場合でも、重加算税が適用されているケースが多くあると聞いています。
今回の改正で重加算税の負担が増えていますから、安易に受け入れてしまうと、大きな負担を背負ってしまうことになります。もし税務調査などで指摘をされて重加算税の適用がされてしまった際には、安易に受け入れず納得がいくまでしっかりと交渉をしたほうが良いでしょう。
◯一定期間を過ぎれば、対象にならない
今回の改正は上記の通り、「修正申告等があった日の前日から起算して5年前の日までの間」が対象となります。ですから、この期限を過ぎた場合は10%加算の対象外となります。ですから、「平成29年1月1日以後に申告期限が到来する事業年度」につき、税務調査を受けて重加算税との指摘を受けた場合、これに納得できなければ、安易に修正申告に応じずにしっかりと交渉をしたほうが良いと思われます。交渉に時間が掛かることで、この期間が過ぎてしまうケースもあり得ます。
今後、気をつけて頂きたいのは、税務調査等で指摘をされた際に「重加算税の適用を受けない」様にすることと仮に適用されたとしても安易に受け入れずに、しっかりと納得がいくまで交渉をされることです。
税務調査に対しては、税理士先生によって対応のスタンスが異なりますから、万が一顧問税理士の対応に疑問を感じる様なことがあった場合には、他の税理士に「セカンドオピニオン」として意見や見解を求めることも重要な対応になります。
弊社でも税務調査に強い税理士を「セカンドオピニオン」としてご紹介することもできますので、何かお困りの際は下記連絡先へお気軽にご相談下さい。
社員の不正で重加算税?
Q:先日、当社に税務調査があり、社員が出入り業者から不正にバックリベートを受領していることが判明しました。
これに対して税務署側は、「社員が受け取ったリベートは法人の収益である」として申告漏れと重加算税の適用を言い渡されました。
当社として社員個人の不正で会社が税負担をすることに到底納得出来るものではありません。
税務署側の主張に従わざるを得ないのでしょうか?教えてください。
A.税務調査で従業員の不正が発覚するケースが多くあり、なかでも取引業者からキックバックを受領していたというケースも多くあります。
ご質問者の様に、従業員が不正に受け取った収益が「法人の収益計上漏れ」だとして「重加算税」の追徴がされるケースもあります。会社側もいわば被害者であるのに、重加算税の対象だとして課税されることに対して反論はできないのでしょうか?
実際に過去の裁判で、従業員が出入り業者から受け取ったバックリベートに対して税務署側が法人の収益計上漏れと重加算税の指摘を行い、これを不服とした納税者側が裁判を起こした事例があります。
この判決のポイントは、
・ 収益が法人に帰属するかどうかは、従業員の法律上の地位や権限に基づいて検討する必要がある。
・ 当該法人の場合、バックリベートを受け取った社員は仕入業者の選定や仕入金額の決定に関する権限がなかった。
・ 仕入に関しては入札制度があったが、実際には1社しか入札がなく機能していなかった。
・ 就業規則には「会社の許可なく、職務上の地位を利用して、取引先等の外部から金品等のもてなしを不当に受けた時は解雇する」という規定があった。
・ 社員がバックリベートを受けた場所は、会社ではなく離れた喫茶店であったこと。
これらの状況を踏まえて、裁判所が出した判断は、
・ 社員が仕入に関する決定権限を会社与えられていたとは認められない
・ 仕入に関するバックリベートにつき、社員が会社から法的な受領権限を与えられていたとは認められない。
・ 社員はあくまでも「個人的地位」に基づいてバックリベートを受け取ったものと認められる。
・ 従って社員が受け取ったバックリベートは法人の収益に帰属するものではない
として、納税者側の主張が認められ、法人の収益計上漏れとそれに係る重加算税が取消となりました。
社員が不正に受け取ったリベート等について、法人の収益か否かの判定は、
・ 不正を防止するための手段を講じていたか?
・ 一般的な監督管理を行えば、防止できた否か?
・ 不正をした社員の職制は?
がポイントとなります。
ですので、ご質問者の会社がどの様な社内ルールを設けられていたのか?とバックリベートを受け取った社員やその状況がどの様なものか不明なので、なんとも言えませんが、上記のポイントを踏まえますと、税務署側の判断を覆せる可能性はあると思われます。
どんな会社でも従業員による不正は起こりうることで、不正ができない仕組みをいかにして構築するかは非常に重要なことです。社員は「信頼」しても「信用」しない仕組みが重要です。
重加算税は不要?
Q:弊社に先日、税務調査がありました。
数件、現金で頂いた売上の計上が漏れている点を指摘され、「重加算税の対象になります」と言われました。
どうも納得出来ないのですが、本当に重加算税の対象となるのでしょうか?
A.重加算税の対象になるかどうかは記録の状況によります。
現金計上が漏れていた事を税務調査で指摘された場合、税務署側から「重加算税を課す」と言われることが多くあります。
例えば、現金売上の記録はあるが、経理処理を忘れてしまい売上の計上漏れとなったとします。これを税務調査で指摘されると「売上除外なので重加算税の対象になる」と言われる可能性があります。ですが、本当に重加算税の対象になるのでしょうか?
重加算税の対象になるためには、「仮装(ごまかした)」「隠ぺい(隠した)」という事実がなければなく、これを立証する責任は税務署側にあります。
実際の事例では、先ほどの例の様に現金売上記録がありながら売上計上が漏れた事に対して重加算税と指摘され、それを不服として納税者側が不服申し立てをした過去の事例があり、「仮装」「隠ぺい」ではないとして納税者側の主張が認められたものもあります。
ここで注意しなければならないのは、売上の記録をしないとか、二重帳簿を作って、売上計上をしない事は「仮装」「隠ぺい」となり、重加算税の対象になります。重要なことは売上記録を残しているかどうかです。
もう一つ注意しなければならないのは、税務調査が入って売上漏れとして税務署側から「重加算税の対象」と言われた時に、顧問税理士がキチンと反論出来るかどうかです。中には税務署側の主張を受け入れる税理士もいますので、そこはくれぐれもご注意ください。
お心当たりがある方は下記の弊社連絡先までご相談ください。
※この記事は過去にメルマガで配信した内容です。
法改正等により、現状とは異なっている部分がある可能性がありますことをご了承ください。
2016年3月14日(Vol.177)、2017年4月17日(Vol.228)、2017年5月15日(Vol.232)
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