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結婚子育て非課税贈与の罠と逆活用

3月31日に、平成27年度税制改正法が成立しました。

そこに含まれる「結婚・出産・子育て資金贈与の非課税」の制度は、 使える制度なのでしょうか?

 

A:法的な欠陥や争族を誘発する仕掛けが内在されていますので、活用には注意が必要です。【1】更なる落とし穴と合わせて、【2】逆活用のヒントをお伝えします。

まず、【1】更なる落とし穴を解説します。

「結婚・出産・子育て資金贈与の非課税」の制度は、「教育資金贈与の非課税」と異なり、贈与者が死亡した時点の贈与金額の残高を、贈与者の相続財産に加算されます。そこで、たとえば、次のように、普通に、この利用した場合を考えてみましょう。

まず、この制度で今年に800万円の贈与を受けた孫が、結婚等で300万円は使ったとします(つまり、500万円が残額となります)。子供を作るのは、もう少し経ってからと、贈与を受けた孫夫婦は、しばらく共稼ぎをしていました。

結婚以後、祖父は毎年110万円の暦年贈与もしていてくれました。やがて、800万円の贈与をしてくれた結婚の時から5年が経過した時に、贈与してくれた祖父は亡くなりました。

すると、残額の500万円は、祖父の相続財産に持ち戻しされて、そこから孫に遺贈がされたとみなされて、孫に相続税が課税されてしまいます。

しかも、相続人ではない孫が、遺贈により財産を取得したため、相続開始前3年間に暦年贈与された110万円×3年=330万円も、相続財産に加算されることになりました。つまり、残高の500万円+330万円=830万円について相続税が課税された訳です。

しかし、この制度を使わずに、孫の結婚の際に、結婚費用として、扶養義務者である祖父から孫に300万円の贈与をすれば、扶養義務者間の必要な都度の贈与ですから元々非課税となります。さらに、前述の例と同様に、結婚の年から亡くなるまでの5年間、毎年暦年贈与110万円をし続けたとします。すると、110万円×5年=550万円は無税で孫に贈与でき、結婚費用の贈与の300万円を含めて850万円全てに一切課税されることがありません。

何故なら、孫は、相続人ではありませんし、祖父の相続開始によって遺贈も受けていないので相続開始前3年間の贈与加算もないからです。

前述の例が830万円に相続が課税されてしまうのに対して、この制度を利用しない方が一切課税されず有利になります。

続いて、【2】逆活用のヒントです。

祖父は、「結婚・出産・子育て資金贈与の非課税」の制度を使わずに、孫の結婚費用を300万円負担しました。これは、上記【1】の初めの例と同様に、非課税です。しかし、上記【1】の後の例と異なり、毎年の暦年贈与は一切しませんでした。何故なら、自身の老後の生活費を考えたからです。

しかし、孫の結婚から4年を経過した頃から急に体調が悪化し死期が近いことを悟りました。そこで、孫に対して遺言で、500万円を渡すことを考えました。

ところが、こうすると、孫は祖父の相続開始によって、遺贈で財産を取得した“相続人以外の者”となるので、相続税額が2割加算になってしまいます。

そこで、祖父は死の床で「結婚・出産・子育て資金贈与の非課税」の制度を利用して孫に500万円の贈与をしました。既に結婚している孫ですから、出産・子育て資金としての“名目”です。

でも、孫夫婦は共働きを続けていますので、当面、子供を作る予定がないので、やがて祖父の死亡により、その500万円はそのまま残ってしまい、相続財産とされ、孫に遺贈されたとみなされます。

しかし、この残額の加算については、遺言の場合と異なり、相続税額の2割加算がないと言うのが特色でした。

このように、従来よく行われていた遺言で孫に遺贈する方法に替えて活用する方法は、「結婚・出産・子育て資金贈与の非課税」の制度を逆手に取った活用として使えます。

贈与について詳しいご相談は、資産税に強い税理士をご紹介しますので、お気軽にお問い合わせください。

 

育児休業を取得した社員の取り扱いについて

Q: 育児休業で休んだ社員をどのように評価・処遇すれば良いのでしょうか?

長期間にわたり実務に携わっていないので評価・処遇は普通に勤務している社員とは変えざるを得ないのですが、格差をつけても良いのでしょうか?

 

A:現在、政府の方針もあり、育児休業が法制化され「同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること」「子が1歳に達する日(誕生日の前日)を超えて引き続き雇用されることが見込まれること(子が1歳に達する日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く)」の条件を満たす社員は育児休業が取得出来る様になりました。

しかし、育児休業(介護休業)を取得することを原因として、昇進、昇給させないなどの行為が行われていることもありますが、当然、これらの対応は禁止となっています。

いくら賃金規定の項目に、育児休業(介護休業)を取得した社員に対する処遇評価を変える(昇級しない等)旨を規定していたとしても、育児休業法第10条では「育児休業を取得する者について、不利益な取扱いをしてはならない」となっており、これに抵触することになり独自で作った各種規定は無効となります。実際にそのように判断された過去の判決事例もあります。

育児休業取得を理由として、社員等の労働条件を下げる不利益な取扱いは禁止されていますが、働き続けている社員との人事評価の違いという関連もあり、その境目は明確ではありませんでしたが、過去の判決事例では「育児休業の取得そのものに制限をかけることは違法」と当然の判断をしています。

ですから、「育児休業の取得を取得していない社員」と「育児休業の取得を取得した社員」とで、人事考課などで差をつけてはいけないということなのです。

育児休業法の指針(平21厚労省告示509号)では、育児休業取得につき、下記の行為はしてはいけないとされています。

〇昇進、昇格に対する不利益

〇一定期間の昇進、昇格の選考対象としない人事評価

昇給そのものは指針の中に含まれていませんが、同じ考え方になるでしょう。もちろんこの規定は性別を問わず、差別的な取扱いを法律では禁止しています。

しかし、育児休業を取得することにより、日常の業務の負担が周りの社員にかかることもあり、育児休業を取らず、働き続けている社員の方が結果として、会社に貢献していることも事実です。

だからといって、不利益な取り扱いは許されないことも結論です。ここは「会社に対する貢献、人事考課」と「法の考え方」が乖離する面もあるのですが、それは仕方のない部分となります。育児休業だけでなく、介護休業も含め、会社としてはどのような対応をするのかにつき、慎重な判断を迫られる部分となるのです。

育児休業等、労務に関するご相談は提携専門家をご紹介することで対応をいたしますので、まずはお気軽に弊社までご相談ください。

 

 

※この記事は過去にメルマガで配信した内容です。 法改正等により、現状とは異なっている部分がある可能性がありますことをご了承ください。

2015年4月16日( Vol.93)、2015年4月30日(Vol.97)