減給の画像

働かない社員の給与を減額しても問題はないか?

Q:一定のスキルを持った人を社員として採用していますが、入社後の勤務態度やレベルに大きく差があるのが現状です。

そこで成果の上がらない社員の賃金カットや降格処分を行いたいと考えています。どのように実施すればよいか教えてください。

百戦錬磨の社労士が回答します。

 

A:通常、賃金をカットすると、民法を盾に、労働条件の「不利益変更」となり、一方的な処分を行うことは不法行為とされてしまうことが多いです。

しかしながら経営はボランティアではないので、働きの悪い社員に対する賃金は見直したいと思われるのは自然な流れでしょう。

入社時の自己申告能力と現実の能力に大きな差がある場合の対応策としては、労働契約書を交付する際に、「地位特定者」の労働契約を締結されることをお勧めします。1年間の勤務状況や成果をみて、実際の職務遂行能力が著しく低い場合は、会社の基準に基づき、同レベルの社員の賃金に合わせて増額又は減額を行う旨、労働契約書に明記することで問題発生を回避できます。

また採用決定~入社時までの早い段階で、「源泉徴収票」を提出させ、前職における年収を確認し、嘘の申告が無いかどうかチェックすると同時に、年収に見合った職務遂行能力を備えているかどうかのヒアリングを十分に行います。そうすることで能力不足の社員の侵入を防止することが出来ます。

次に、既に入社して数年経過している能力不足社員に対する対応策ですが、評価制度、賃金制度がある場合はその基準に従って評価によって減給・降格が可能となります。今回のケースでは下記1~3の中で、2と3が該当します。 多くの中小企業では評価制度や賃金制度が整備されておらず、社員の賃金は経営者の独断で決定しているケースが散見されます。

そのような状態で降格や減給をされる場合は、慎重に事を運ばないと、労働者からの思わぬしっぺ返しを食らうことになるかもしれません。

<合法的な不利益変更が認められる場合>

1.企業活動が維持できない状態にある

これはリストラの要件(注1)にもあげられますが、賃下げ等を行わなければ企業運営そのものに支障がる場合です。当然、経費の削減や役員報酬の引き下げなど、既に各種改善策を行っていることがその前提となります。

2.客観的で合理的な基準に基づいている

人事評価制度及び賃金制度が導入されており、その明確な判断材料により、社会通念上妥当な範囲の中で処分が行われていること、更にその査定結果や指標などが密室で行われているのではなく開示されていることが必要となります。

3.処分を受ける相当の理由がある

本人に降格や減給を受けざるを得ないような理由が明確であることも必要条件となります。その前提として就業規則や関連諸規定が整備されており、かつ周知されていることが要件です。

(注1)リストラ前の4つのハードル

※1~4のすべてを満たすことが条件です。

ここで気を付けたいのは、社員と会社との間で信頼関係が構築されているかどうかで閣下が変わるということです。信頼関係があり、十分な業務改善に向けた指導を行った上での処分であれば、場合によっては降格や減給の処分が逆に発奮材料となり、業績向上に寄与してくれることも考えられます。

しかしながらそういった関係が構築されておらず、労使間に不信感がある中での処分は、労働者にリストラの恐怖感を与えてしまい、多くのケースでは逆効果になっているようです。 場合によってはユニオンに駆け込まれ、不当労働行為として待遇を元に戻すよう要求されることにもつながります。

 

 

減給をする際のポイント

ある社員を部長という肩書きを与えて管理職に登用しました。

もちろん相応しいレベルに給与も上げました。

ところが仕事の能力はあるのですが、管理職としては不適格だということが判明をしたので降格をさせて元の給与に戻したいと考えています。

この手続きにおいて気をつけるべきことがあればアドバイスをください。よろしくお願いします。

 

A:

従業員の労務に関するご質問の中に、給与に関するものが多くあります。昇級やベースアップをする場合は、どのようにあげるのか?という観点と同時に資金繰りに及ぼす影響等も考える必要がありますので、総合的な経営判断が必要になります。

これに対して「降格」や「減額」を行う場合についてのご質問も多くあります。ご存知の方も多いと思いますが、給与を下げることは従業員に対する「不利益変更」となりますので、根拠なく引き下げることは法律上禁止されています。

では、実際にどのようにして給与の減額を行えば良いのでしょうか?一般的には単に役職を「降格」させることで「減給」させるということになるのですが、この「降格」という定義について確認をしておきます。

・降格とは、肩書きや職務等級を引き下げることとされています。

→例えば「部長」から「課長」にするケースや、職務等級を「Aランク」から「Cランク」に引き下げるなどが該当します。

ですがこの降格については、2種類あるということはあまり理解されていないポイントです。具体的には、「人事権の行使」としての降格と、「懲戒処分」としての降格があります。人事権の行使としての降格については、就業規則等に明確な規定がなくても降格は可能です。ただし雇用契約において職位が決められているケースや、一般的には考えられないレベルでの降格については「権利の乱用」として認められないケースがあります。次に懲戒処分としての降格については、就業規則や雇用契約書などでルール化されていなければ実行は出来ません。

人事権の行使として降格させる場合については、過去に降格された従業員が不当な降格だと訴えた裁判例もあります。訴訟を起こした従業員側が負けた(降格は妥当と判定された)例のポイントは「降格処分に正当な理由があり」「処分の内容も妥当である」と判断されたケースです。逆に従業員側が勝った(降格は不当と判定された)例のポイントは「降格処分に妥当な理由がない」ケースや処分の内容が「極端な人事異動で人格を傷つけるレベル」であったりした場合には、不当な降格と認定されたケースもあります。

整理をしますと、

・ 人事権の行使による降格

→降格について合理的な理由があり、前例もあるような他社でも行われるレベルでの妥当な降格であるかどうか?

・ 懲戒処分としての降格

→雇用契約や就業規則に懲戒処分に関する規定があること

の2点がポイントになります。このポイントに合致して「降格」させて「減給」した場合には、従業員から「不利益変更」だとして訴えられても十分に対抗できる可能性があります。

昇級以上に減給は注意すべきポイントが多くありますので、実際に進める際には専門家としっかりと相談をして進めてください。弊社では提携している専門家をご紹介することも可能ですので、ご希望の方は下記連絡先へご連絡ください。

※ご相談は無料です。

 

労働条件を変更する際のポイント

Q:弊社では業績悪化に伴い
労働条件の変更を検討しています。

従業員にとって不利益となる変更は
難しいと言われていますが、
実際に行う際には
どのような点に注意すれば良いでしょうか?

教えて下さい。

 

A.不利益変更のポイントは「経緯」・「変更の内容」・「説明の方法」です。

会社が社員の給与などの条件を変更する事を「労働条件の変更」と言いますが、給与を下げるなど、社員にとって不利な変更は「不利益変更」と言い、勝手に変更することは禁止されています。

実際に不利益変更を行う方法としては、「社員の同意」と「就業規則の変更」があります。ポイントは同意が得られれば不利益変更も法律的には可能です。ですので、不利益変更を行う場合には社員へ説明を行い、同意を得ることが重要です。

仮にどうしても同意が得られない場合については、就業規則の変更により不利益変更を行うことになりますが、就業規則の変更については不利益変更の合理性があることが条件となりますので、かなり慎重な対応が必要です。

ただし注意しなければならないのは、社員の同意が得られれば、どのような内容の不利益変更を行っても良いという訳ではないという点です。これについて過去の裁判例では、不利益変更を行わなければならない「経緯」や「変更の内容」・「説明の方法」によってはたとえ社員の同意が得られていても不利益変更が無効とされた事例もあります。

不利益変更をする場合、変更事項について丁寧な説明が必要になります。具体的には、

・ 労働条件を変更せざるを得なくなった経緯

・ 変更後の具体的な条件(給与の額、賞与の額、退職金の額など)

・ 大幅に条件が変更となる場合の緩和措置(調整手当の有期的支給など)

これらを丁寧に説明した上で、社員から「内容を理解したことへの承認と同意」を書面でもらうのです。また、会社が説明会等で「どのような資料を使って説明したのか」という事も重要視されます。

業績悪化や救済合併などにより、やむを得ず不利益変更をする場合には、これらのことを参考にして頂き、慎重に進めて下さい。

 

※この記事は過去にメルマガで配信した内容です。
法改正等により、現状とは異なっている部分がある可能性がありますことをご了承ください。

2015年1月26日(Vol.70)、2015年11月30日(Vol.152)、2016年6月13日(Vol.192)