労働時間と休憩時間の画像

「休憩時間」の定義とは?

Q:当社では業務の性質上、休憩時間とは別に社員が待機する時間がしばしば発生します。

この待機している時間を休憩時間とする事が出来れば非常に効率がよくなるのですが、

待機している時間を休憩時間に充当する事は可能でしょうか?

 

A.待機している時間とは別に休憩時間は確保する必要があります。

労使のトラブルとして、給与や休暇についで多いのが、今回のご相談である「休憩時間」に関するものです。

例えば飲食店の様に客商売をしていると、客足が途切れることがしばしばあります。この客足が途絶えた時間を「休憩時間」としてみなす事が出来るのでしょうか?

まず法律上の「休憩時間」の定義ですが、これは「労働者の権利として、労働をしなくてよい時間」を指します。ですので、単に客足が途絶えた時間は、客が来ると対応をしなければなりませんから、完全に休憩しているとは言えません。

この様に客足が途絶えて実際の作業等をせずに待機している時間のことを「手待時間」と言います。この「手待時間」は、待っている時間であり、状況によってはすぐに業務に復帰しなければならない時間であるため、完全に休憩しているとは言えません。

手待時間の具体例としては、

・ 店舗でお客さんが来るのを待っている時間

・ 工場等で、原材料が届くのを待っている時間

・ 工事現場等で、作業員が工事車両を待っている時間

などが挙げられます。

ですから、手待時間が多く発生をする業種であっても、別にきちんと休憩時間を与える必要があります。そのための対策としては、

・ 客足が途絶えるなど「手待時間」が発生しやすい時間帯を想定する。

・ その時間帯を考慮してシフト制で休憩時間を設定する。

・ パートやアルバイト等を活用する

などのことが考えられます。

繰り返しになりますが、休憩時間か手待時間かの判断については、「その労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否か」が判断の基準になります。

実際に行政側の判断としても、「休憩時間とは単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱うこと。」としています。

この休憩時間に関するテーマはトラブルになる事も多くありますので、くれぐれも注意してください。

 

 

制服へ着替える時間は労働時間か?

Q:当社では、工場で作業するにあたり、社員へ作業着への着替えを義務付けています。

先日、新しく採用した社員が、「着替えるのも労働時間なので、会社に着いた時点でタイムカードを押すべきでは?」と言い出しました。

従来は、会社の更衣室で着替えた後、工場に入る前にタイムカードを打刻させていましたが、この運用ではダメなのでしょうか?教えてください。

 

A.客観的に見て指揮命令下に置かれているかどうかが賃金対象になるかどうかの分かれ目になります。

制服や作業着に着替える時間は労働時間に含まれるのでしょうか?この取扱については頭を悩ましておられる企業も多くあると思います。

一つ参考になる裁判例をご紹介します。

<前提条件>

■  A社は労働時間について、就業規則で以下と決めていました。

・  所定労働時間は午前8時から午後5時(正午から午後1時までは休憩時間)まで。

・  作業服のほか所定の保護具・工具等の装着を義務付け、所定の更衣所または控所等において装着を行うことが決められていました。

・  始業、終業の基準は「始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、始業時刻に作業場において実作業を開始すること」「終業時刻までは実作業に従事し、終業後に更衣等を行うこと」と決められていました。

・  始業、終業の勤怠把握は、「更衣を済ませ始業時に体操をすべく所定の場所にいるか否か」「終業時に作業場にいるか否か」で判断がされていました。

■  上記の内容に違反した場合は、就業規則に定められた懲戒処分又は就業の拒否が行われており、成績考課にも反映されて賃金の減収になる場合もありました。

■  これに対し従業員が、所定時間外に行った行為の時間は労働時間に該当すると主張して、割増賃金の支払いを求め、裁判を起こしたのです。

<裁判所の判断>

■  実作業にあたり作業服や保護具等の装着を義務づけられ、着替えを事業場内の更衣室等で行うものとされていた。

■  これらの装着や更衣室等から準備体操場前の移動は、会社の指揮命令下に置かれていた。

■  作業服などの着替えを終えるまでも会社の指揮命令下に置かれている。

■  これらの時間は労働時間とし、該当する時間の賃金を支払うように命じた。

ポイントとしては、「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれているかどうか」で労働時間にあたるかどうか判断しています。この「指揮命令下」かどうかは、規則上ではなく客観的に見てどうかという判断がされています。

ご紹介をした事例では、更衣室での着替え時間や更衣室から作業場までの時間も指揮命令下に置かれていると判断され、賃金の支払い義務があるとされました。

「指揮命令下」であるかどうかの基準を整理すると以下の様になります。

■  準備行為であること

・  準備行為とは、その行為が業務を行ううえで必要不可欠なもの

・  法令上義務付けられている保護具、安全靴等の装着

・  就業規則、社内規則により義務付けられている制服、作業服への着替え

・  慣習により行われる準備や後始末で、それを行わないと不利益な取扱いがされる場合等

■  準備行為を事業所内(場所的拘束性)で行うこと

・  安全保護具等は指定された場所に整理して保管すること

・  作業服等の装着は所定の更衣所又は控所等において行うこと

・  事業所内で準備や後始末を行うこと

■  義務付けられていること

・上記を行うことを就業規則やその他の規則により義務付けている

上記を踏まえますと、制服に着替える場所を会社の更衣室でも良いと自由にすることが出来れば、着替えの時間は労働時間には当たらないと思われます。

着替える時間はわずかかも知れませんが、これが毎日積み重なるとそれなりの時間になりますので、明確なルールで運用されることをオススメいたします。

 

2017/7/31(Vol.242)、2018/1/29(Vol.263)