役員退職金は否認されやすい?
Q: 役員退職金支給についての注意点
来年に息子(専務)を社長にして、私は代表権のない会長へ就任する予定にしています。
社長退任時に役員退職金を支給する予定にしているのですが、役員退職金を支給すると税務調査が入る可能性が高く、指摘されるケースが多いと聞きました。
役員退職金支給について注意すべき点を教えて下さい。
A:主なポイントは2点です。
役員退職金支給について、注意すべき主なポイントは2点あります。
まず1点目は、そもそも「役員退職金支給にふさわしい退職かどうか?」という点です。これは法人税基本通達9−2−32(役員の分掌変更等の場合の退職給与)に細かく規定されています。
法人税基本通達で掲げているポイントは以下の通りです
・ 常勤役員が非常勤役員になった場合
・ 取締役が監査役になった場合
・ 変更後の役員報酬が50%以上減額された場合
・ これらの変更により、地位と職務内容が『激変』した場合
この場合には、支給する退職金を損金計上して良いとされています。特に一番重要なのは4番目の「地位と職務内容が『激変』した場合」です。
例えば代表取締役から取締役へ変わっても、
・ 出勤日数が変わらない
・ 実印・銀行印を管理している
・ 社内における席の位置が同じ
・ 取締役会等、重要な会議に出席している
・ その他経営上に影響力を持っている
などの状況が認められた場合には、退職とはみなされずに支給した退職金が役員賞与と認定されるケースもあります。そのためにまずは、退職金を支給するに値するだけの分掌変更であるという事が大前提となります。
次に重要な点は、役員退職金支給額が適正かどうか?という点です。過大な役員退職金は、法人税法の規定により損金不算入となるケースもあります。
ではこの「過大な役員退職金」とはどの様に判定されるのでしょうか?法人税法の規定では以下の様に定められています
その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(法人税法施行令70条1項)
簡単に言いますと、同じ地域の同規模の同業者と比較をして過大か過大でないか?を決めると定められています。残念ながら同じ地域の同規模の同業者と比較が出来るのは税務署だけであり、一般にはデータは公開されていないので注意が必要です。
そのために役員退職金支給については、税理士や所轄税務署と綿密な打合せを行って頂く必要がありますので、この点については十分にご注意下さい。
実際に上記2点のポイントを税務調査において指摘をされている事例は多くあります。さらには上記以外にも役員退職金支給については、注意して頂くポイントが多くありますので、慎重にご検討下さい。
役員退職金の支給に関するご相談や顧問税理士以外の税理士によるセカンドオピニオンサービスのご利用など、何かございましたらメール又はお電話にておきがるにお問い合わせ下さい。ご相談は無料です。
役員退職金は取れないのか?
Q:役員報酬はゼロなのですが・・・
事業を後継者へ引き継ぐために役員報酬をゼロにして、報酬の原資で数年前より法人へ貸していた資金の返済を行っています。
とあるセミナーで、役員退職金は、最終報酬月額により支給額が変わると聞きました。私の場合、役員報酬がゼロなので役員退職金は取れないのでしょうか?
ちなみに創業してからずっと代表取締役で20年やってきました。多額の退職金は要りませんが、少しでも貰えることが出来ればありがたいと思っています。
よろしくお願いいたします。
A:役員報酬がゼロでも退職金は取れます。
役員退職金の支給額を計算する際に「役員在任年数×最終役員報酬月額×功績倍率」という計算式を用いて計算を行いますが、この計算式で算出した金額は、正確には役員退職金の支給額ではなくて、役員退職金損金額の目安を算出する計算式になります。
役員退職金を法人経理上の損金に計上しなければ、役員退職金はいくら支給しても構いません。
ただ今回のご質問の方の場合、最終役員報酬月額がゼロなので、役員退職金を支給しても1円も損金計上が出来ないのか?と言えばそうとは限らないと思います。
役員退職金損金の基準は、同一地域・同一業種・同規模の他社における役員退職金損金計上額の平均額との比較で判断されますので、同一地域・同一業種・同規模の他社で役員退職金の損金計上がされている場合には、役員退職金を支給しても損金計上が出来る可能性は十分にあると思われます。
ただし役員退職金を支給する場合の損金計上については、国税不服審判所における否認事例と是認事例が数多くありますので、個別ケースにおいては所轄税務署と顧問税理士によくご相談をされることをオススメいたします。
顧問税理士以外の意見を「セカンドオピニオン」としてお聞きになりたい場合には、弊社提携の経験豊富な税理士をご紹介いたしますので、お気軽にご相談下さい。
税務署が役員退職金の額を制限する?
Q:今期退任をする社長に対して
役員退職金の支給を予定しています。
ところが顧問税理士からは、
支給金額が大きいと言って
もう少し減額する様に言われています。
このままですと、
税務署に指摘されますよ
とも言われました。
なぜ役員退職金の支給額を
税務署に決められなければならないのか
納得が出来ません。
A:役員退職金の支給額は税務署が決めるわけではありません。
ご相談者の顧問税理士が少し説明不足なので、誤解をされている様ですが役員退職金支給額を税務署が決めるとこはありません。
正しくは、
「支払った役員退職金を法人の損金として計上する事が認められる金額が決まっている」
という事です。
法人から退職する役員に対して、役員退職金は幾ら支払をしても問題はありません。ただし法人の決算上で損金として算入できる金額には一定の制限があり、その制限金額を超えて支給をすると法人での損金算入が認められないだけの事です。
では、税務署はどの程度の役員退職金であれば損金と認めてくれるのでしょうか?これについては残念ながら明確に基準があるわけではありません。税務署側は「同一地域・同一業種・同一規模」の他法人での支給実績と比較検討し退任する役員の事業貢献度などを踏まえて、妥当かどうかを判定しているのが実情です。
そのために個別事案において、比較検討をして過大かどうかの判定を行っているので例えば数億円の退職金を支給しても、ある会社においては認められても、ある会社においては認められない事もあります。
一般的に役員退職金の損金算入の限度額を計算する目安としては、
「最終役員報酬月額×役員在任年数×功績倍率」
という計算式が有名で、功績倍率は「社長3・取締役2・監査役1」という様な目安があると言われていますが、この功績倍率も先ほどの「同一地域・同一業種・同一規模」の他法人での実績と退職する役員の貢献度合い等にて過大かどうかの判定をしますので、一概に目安になるともいえないのが実情です。
では、法人での損金算入限度額を超えて役員退職金を支給する事にメリットはあるのでしょうか?
結論から申し上げますと、個人において退職金は「退職所得」として所得税を計算されるために法人で損金にならなくとも多くの退職金を支給する事はトータルで見ればメリットがあるケースも多くあります。
ただ退職金支給において重要なのは、法人税や所得税といった税金ではなくて、勇退される役員の「第二の人生においてどのくらいのお金がほしいのか?」という観点であると言えます。
目先の税金を意識するがばかりに、法人経営における「功労金」が目減りしてしまうのは得策ではないと言えるでしょう。
役員退職金については顧問税理士や所轄税務署との打ち合わせも重要ですが、勇退される役員の人生設計を重視したうえで支給可能な原資を確保しておく事も重要なのではないでしょうか?
弊社では役員退職金支給に関する各種ご相談を無料で承っておりますので、お気軽に下記フォームまたはフリーダイヤルにてご相談下さい。
役員退職金はどう計算する?
Q:役員にした私の家内を退職させるのですが、退職金の計算はどのようにすればよいでしょうか?
従業員期間25年間、取締役5年間、従業員から取締役になる時に退職金は受け取っていません。
退職金を計算する在任年数に従業員の期間25年間を含めてよいのかダメなのか・・・
A:従業員期間も含めることが出来ます。
役員が退職する際に支給する退職金について、損金として認められる限度額を計算する計算式として以下の算式があります。
最終役員報酬月額×役員在任年数×功績倍率
法人よりこの算式で算出した金額で役員退職金を支給すれば、損金に認められるとされています(実際は顧問税理士ならびに所轄税務署へご確認ください)
この計算式で計算する際に、ご質問のように従業員期間がある役員の場合は、どのように計算すればよいのでしょうか?結論から申し上げますと、冒頭にも書きました通り従業員期間も含めて在任年数30年として計算をすることが可能であると考えれられます。
ただしこの事例の場合、注意しなければならないのは「役員在任年数5年」という部分です。これは平成24年に規定されました「特定役員退職金」に関する部分に該当する可能性があります。
この制度は、短期間だけ役員として在籍したものであっても退職金に関する退職所得を計算する際に1/2を控除出来る仕組みを乱用することを防止する目的で、5年超にわたり勤務した役員のみに1/2控除の仕組みを残し、就任期間が5年以内の役員には1/2控除が使えなくなりました。
ご質問者の場合、役員在任期間の5年に関してはこの「特定退職金」という認定を受ける可能性がありますので、いずれにしても顧問税理士ならびに所轄税務署へご相談されることをおすすめいたします。
顧問税理士以外の税理士にも意見を聞きたい、というご要望がございましたら弊社提携の税理士をご紹介いたします。役員退職金の支給・運用・積立につきましてのご相談は下記より承っておりますので、お気軽にどうぞ!
役員退職金が税務調査で指摘?
Q:一時期、悪化していた業績が回復傾向になってきたので今期より役員報酬を引き上げました。
そして来年には後継者に事業を譲り私は退職金をもらって退任する予定です。
ところが税理士からは、役員報酬を引き上げた直後の役員退職金は税務調査で指摘されやすいので注意が必要だと言われました。具体的にはどういう事でしょうか?
A:役員退職金支給計算の算出根拠で税務調査時に指摘される可能性があります。
会社の業績によって役員報酬を引き下げたり、引き上げたりするのは経営判断としては当然であると言えます。「業績が悪化して役員報酬を引き下げ」たのちに「業績が回復して役員報酬を引き上げ」てから「引き上げた役員報酬を元に役員退職金を計算して支給」することも十分にあり得ると思います。
役員退職金を損金計上する場合には、「最終役員報酬月額×役員在任年数×功績倍率」という計算式によって目安の金額を算出しますが、この「最終役員報酬月額」を直前に引き上げると役員退職金の損金を増やすために「意図的に引き上げた」とみなされて指摘をされる可能性があります。このようなケースにおいては、税務調査で指摘されないように役員報酬は引き上げない方が良いのでしょうか?
過去の判例においては、役員退職金の支給額を引き上げるためではなくて「業績が回復したために引き上げた」ことが客観的に証明出来れば、仮に税務調査で指摘をされたとしても納税者側の主張が認められたものもあります。
ただここでポイントになるのが、
・ 引き上げた役員報酬額が、同一地域・同一業種・同一規模の企業と比べても高額でないこと
・ 支給された役員退職金が、同一地域・同一業種・同一規模の企業と比べても高額でないこと
という2点になります。
最近になって、業績が回復してきている企業も多く、業績回復に目処がたったので後継者に事業を譲るというタイミングを迎えている企業も多いのではないでしょうか?直前期に役員報酬を引き上げたのちに退職金を支給すると、将来の税務調査において指摘をされる可能性は高まりますが、今回の内容を踏まえて税務調査時には主張することを覚えておいてください。
なお役員退職金支給については、税務調査の対象になりやすいので所轄税務署・顧問税理士との相談だけでなく第三者の税理士に意見を求められるのも一考です。
弊社ではセカンドオピニオンとして意見が出来る税理士もご紹介出来ますので、ご希望の方はお気軽にご連絡下さい。
役員退職金積立を行うポイントは?
Q:将来、退職する役員の退職金準備のために生命保険を活用して積立を行うことを検討しています。
ただ、各保険会社から保険商品の提案を受けましたが、支払う保険料が全額経費になるタイプから、一部しか経費が認められないものなど、いろいろと種類があって、どれをどう選べば良いかが分かりません。
役員退職金の積立を行う際のポイントを教えて頂けませんか?
A.支払った保険料総額に対する「返戻率」を重視してください。
社長や役員が退職時に受け取る退職金の積立を、生命保険を活用して積立をされているケースは多く見かけます。
ただ法人で契約する生命保険商品は、その商品や保険期間・払込期間などにより支払う保険料が経費に出来る割合は細かく規定されています。保険料の全部を損金に出来るものから、全額を損金に計上ができないタイプまでいろいろとあります。
実際に役員退職金の積立に活用する生命保険は、どのタイプのものを選べば良いのでしょうか?結論から申し上げれば、支払う保険料が損金に計上出来る割合よりも、支払った保険料に対して途中解約時や満期時に保険会社から支払われるお金の「返戻率」を重視して選ぶ様にしてください。
例えば、支払った保険料の総額が100で、解約をして受け取ったお金が90とします。そしてこの90を全額、退職する役員の退職金に充当したと仮定します。なお比較を単純化するためにこの役員に支払う90は、全額が法人において経費として認められることを前提にします。
保険料総額の100が経費になるタイプである場合は、支払った保険料が全額経費になりますから、その分利益を圧縮する効果があり、法人において利益が出ている場合には節税効果が得られます。そして解約時に90の返戻金がありますが、これは全額を法人の益金として計上する必要がありますが、同時に退職金として90を支給することで益金と同額の経費が発生しますから、解約による法人の税負担は発生しません。
次に保険料総額の100を全額資産に計上するタイプである場合、保険料を払いこむ段階では経費になりませんから、保険料を支払うことによる節税効果は得られません。ですが、解約時に戻ってくる90に対しては、資産に計上した100を取り崩す処理を行いますので、益金として計上する必要はありません。さらに保険料100と解約金90の差額10については、損失処理を行うことが出来ます。そして役員に支給する退職金90は経費になりますので、ここで90の利益が減少することとなり、期間のトータルで見ると100の経費計上となりますから、結果として全額経費になるタイプと同じとなります。
ですから結論としては、冒頭にも書きました通り、全期間を通じて考えますと、全額経費にしても経費にならなくても効果は同じになります。
ただしここで注意しなければならないのは、実際には全額損金に計上するタイプと、保険料の一部または全額を資産に計上するタイプとでは、途中解約時の「返戻率」が異なり、概ね保険料の一部または全額を資産に計上するタイプの方が、「返戻率」は高い傾向があります。
次に役員に支払う退職金の全額が経費として認められる前提で検討をしましたが、退職金の一部が経費として認められなくなりますと、また効果が変わって来ますので、注意が必要です。
ですので、役員退職金を支給する目的で生命保険を活用する場合には、退職予定時期の「返戻率」が高い商品を選ぶことと、退職金支給予定額がどの程度、法人の経費として認められるか?を見極めておくことが重要と言えるでしょう。
役員退職金に関する新通達
Q:先日、役員退職金の損金計上について新しい通達が出たと聞きました。
損金に計上できる割合が増えた等、何か新しい見解が示されたのでしょうか?教えてください。
A.業績連動に関連した役員退職金の支給についての改定であり、多くの中小企業においてはあまり関係のない内容となっています。
今年の6月30日に国税庁から、役員退職金に関する通達が出されました。少し難解な法律文章ですが、まずはそのままご紹介します。
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法人税基本通達9-2-27 の 2
(業績連動給与に該当しない退職給与)
いわゆる功績倍率法に基づいて支給する退職給与は、法第34条第5項((業績連動給与))に規定する業績連動給与に該当しないのであるから、同条第1項((役員給与の損金不算入))の規定の適用はないことに留意する。
(注)本文の功績倍率法とは、役員の退職の直前に支給した給与の額を基礎として、役員の法人の業務に従事した期間及び役員の職責に応じた倍率を乗ずる方法により支給する金額が算定される方法をいう。
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この通達をそのまま読むと、従来の役員退職金計算でよく用いられている「功績倍率法」は「役員退職金」の損金不算入の規定に該当しないという様に書かれている様に思えます。
という事は、「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」で計算した役員退職金は幾ら支給しても損金で認められるのでしょうか?
残念ながらそうではありません。役員退職金として、同一地域・同一業種・同一規模の他法人における支給実績と比較をして「不相当に高額」であると認定されれば、「不相当に高額」だとされた部分についての役員退職金は損金計上が認められなくなります。
結論的には、今回の通達が出たからといって従来からの役員退職金の損金に関する見解が変わったわけではありませんので、注意が必要です。
役員退職金を貰っても良いか?
Q:近々、代表取締役を退任にして息子である専務に譲りたいと考えています。ただ息子はまだ頼りないところもあり、ある程度は会社に残って面倒を見ないといけないとも考えています。ですので、息子を社長にして私は相談役として会社に残る事を考えております。
この様な状況でも、代表取締役を退任した際に役員退職金を受け取っても良いのでしょうか?
A.支払った役員退職金が「退職の事情」に合っているかどうかが重要です。
多くの企業において世代交代の時期を迎えており、後継者へ経営のバトンを渡したいと考えておられる社長が多くいらっしゃいます。ですが、この後継者へバトンを渡した際に支給する役員退職金については、その退職が「本当に退職をしたと言えるのか?」という事情によって税務上、否認をされるケースがあります。
実際に平成29年1月12日に東京地裁で出された判決では、代表取締役が相談役へ就任した際に前代表取締役へ支払った役員退職金が否認をされて納税者が敗訴となりました。
この事例において、納税者が敗訴した原因は、
・ 代表取締役を退任した後も経営に関与しており、経営上の重要情報にも接している。
・ 経営判断において影響力があった。
・ 高額な支出に際して決済に関与していた。
という事実があったためとされています。
実際に、社長から会長や相談役・顧問などに肩書きを変えて会社に残るケースが多くありますが、重要なことは肩書の変更ではなく、実態として退職をしているかどうか?です。
退職をしたかどうかは「役員報酬を半分以下に減らすだけで良い」と勘違いをされいる方が意外と多いですが、役員報酬を半分以下に減らす事だけでは「実態として退職をした」とみなされません。
例えば、代表取締役を退任した後も毎日出社をしていたり、経営に関与しているケースや、会社の実印・通帳や口座印を管理している様なケースであれば、「実態として退職をした」とは認められずに、支給した役員退職金が否認をされる可能性が非常に高くなります。
では実際に支給した役員退職金が否認されると、どの様な影響が出るのでしょうか?
・ 法人が支給した役員退職金は「役員賞与」と認定され、全額が損金に参入出来ない。
・ 受け取った個人は、退職所得ではなく賞与として課税される。
・ 退職金ではなく賞与であるため、源泉所得税が未納付とされる。
これらに対する税負担は非常に高額となるために、役員の退任時に支給する退職金とその後の処遇についてはくれぐれも注意をする必要があります。
多くの企業において、経営者が高齢となり後継者へバトンを渡す時期を迎えています。後継者へバトンを渡したら、あとは出来るだけ会社には関わらない様にしなければ、思わぬ税負担を強いられる事になります。
言い換えれば、完全に会社と関わらずに済む様な状況を作っておかないと、後継者へバトンを渡せないという事になりますし、やむをえずバトンを渡した後も会社と関わらなければならない状況であれば、退職金の支給は完全に関わらずに済む時期まで見送る方が賢明であると言えるでしょう。
役員退職慰労金規程に従うべきか?
Q:当社では創業社長の勇退に伴い役員退職金の支給を検討しています。ですが、作成している役員退職慰労金規程で定めている金額では不具合があるので、規程を無視して支払うことを検討しています。
役員退職慰労金規程で定めた金額は守らなければならないのでしょうか??
A.重要なのは役員退職慰労金規程ではなく株主総会等の決議です。
役員退職金を支払うために役員退職慰労金規程を作っておられる企業は多くありますが、実は会社法・税法ともに役員退職金を支払う際に規定の有無は要件となっていません。実際に法律上必要なのは、役員退職慰労金規程ではなく株主総会決議となります。
では、この役員退職慰労金規程があった場合には、この規程に従う必要があるのでしょうか?この規程に従わない内容で株主総会決議をした場合には無効になるのでしょうか?
会社法上では、在職中の職務執行の対価として支給されるものであり、定款にその額が定められていない場合には株主総会の決議によって定めることとされています。
実際に過去の裁判例でも、役員退職慰労金規程の金額ではなく株主総会決議で支給をした役員退職金は有効であると判断された事例もあります。ですから役員退職慰労金規程があったとしても、必ずしもそれに従う必要は法的にはありません。
ただし役員退職金に関する税務調査を考えた場合には、損金算入額の問題が発生しますし、 役員退職慰労金規程で計算した金額よりも多額の金額を退職金として支給する場合には、当然、その合理性が税務調査で質問されることは想定しておくべきでしょう。
日本全国の社長の平均年齢が約60歳であり、中小企業庁の発表では、中小企業の経営者の年齢で最も多いのは2015年時点で66歳となっています。まさに事業承継のタイミングを迎えており、役員退職給与の払い出しが目の前の迫っている会社が多いことを物語っています。
こういう状況下ですので、役員退職金を支給する場面は今後想定が出来ます。その際に何を重視すべきか?という事になりますが、まずは「退職金を支給する原資の確保」が絶対条件になります。次に「幾ら支払うのか?」「その金額の根拠は?」「支給決定の方法は?」「退職金支給額における損金参入額は幾らなのか?」という順番で重要になると思われます。
役員退職金については、キャッシュフロー・自社株評価への影響・税法上の損金参入額・退職金受取役員の事情など、勘案すべき項目が多くありますので、慎重に検討をしてください。
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法改正等により、現状とは異なっている部分がある可能性がありますことをご了承ください。
2014/7/17(Vol.26)、2014/10/27(
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(Vol.111)、2017/7/10(
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